X線CTとは
CT=Computed Tomography の略。日本語では「コンピューター断層撮影」=物体の(輪切りなどの)断層画像を得る技術。一般的には「CT」はX線を用いた断層撮影を意味します。
→断層画像の3次元グラフィクスでの表示を3DCTと呼びます。
「物体のあらゆる方向からの投影を集合すると,物体の2次元または3次元物体を再構成できる」

X線CTの原理
X線を発生するX線発生器とX線検出器を向かい合うように設置。この一対のX線源と検出器の間に対象物を置いて、X線を照射しながら回転させることにより、それぞれの角度でのX線のレントゲン(透視)画像を得る。
このようにして得られた情報をコンピュータで処理することによって対象物中のそれぞれの位置でのX線の吸収値を、黒から白に至る輝度(明るさ)として表示したものがCT画像。
コンピューターで行っている処理

3DCT(3次元CT)の再構成

例えば、3画素のX線検出器にて、X線吸収量(明度/輝度)が100のものがあるとします。そして、4方向からの透視/レントゲン画像(投影像)を取得するとします。
上から見た図は以下のようになります。

取得された投影データを基にコンピューター内で逆投影をします。逆投影すると以下のような逆投影データが作られます。



中央部分が100という値を得ることができました。単純な逆投影では周囲に25という数字がでて、画像上ではボケてしまいます。あらかじめ投影データに補正のためのフィルターを掛けて逆投影を行う方式をフィルタ補正逆投影法と呼ばれ、このような手法などで断層像を構築します。(再構成)
ピクセル(Pixel)とボクセル(Voxel)

1)デジタルイメージングで平面(2D/2次元)の画像
縦x横=面積

2)断層像(2D/2次元)の画像を積み重ねる

3)積み重ねると高さが出るので縦x横x高さ=体積(Volume)になる。
Volume+pixel=Voxel
前項の例は上の図では、縦の三行の三列の平面像を例としましたが、実際にはより大きい平面像のサイズで逆投影法などで再構成を行い、断層像を生成します。この断層像の厚みをスライス厚と呼びます。この断層像を積み上げて3次元(3D)データを生成します。平面(2D/2次元)では最小要素の単位をピクセル(Pixel:画素)と呼びますが、立体像(3D/3次元)では、最小要素の単位はボクセル(Voxel)と呼ばれています。
X線CT装置の種類
工業用/産業用/分析用/解析用/のX線CTはX線発生器と検出器は固定。試料を回します。
※傾斜CTのみ検出器を回す方法はある。
X線発生器の置き方と試料の回し方で一般的には3つの方法が挙げられます。
直交型CT(横照射型)

工業用エックス線CTというと一般的にはこのタイプとなります。水平に設置されたX線源と検出器の間に回転ステージ(ターンテーブル)があり、回転ステージ(ターンテーブル)上にサンプルを固定して撮影を行います。搭載できるステージの耐荷重や回転精度、X線源の出力の大小やX線検出器の撮像の範囲や解像度などの組み合わせが多く、さまざまなX線CT装置が販売されています。
X線出力 | 観察対象 | |
---|---|---|
高出力(加速器)X線CT | 900kV~1MV以上 | 自動車のエンジンや金属厚板、大型部品等 |
(マイクロフォーカス)X線CT | 225kV~400kV | アルミダイキャスト、車載用電池、鋳物の巣、溶接部の欠陥、10cm以上の樹脂成形品等 |
(高分解能/高精細)X線CT | 20kV~160kV | 半導体、電子部品、1cm以下の樹脂材料(GFRPやCFRP,コンポジット剤等)生物試料、微粒子、繊維等 |
直交型CT(縦照射型)

縦照射型の3DCTは主に実装基板/PCB、半導体、電子部品向けで透過(レントゲン)撮像をメインとした、装置上部もしくは下部にX線源とX線検出器が縦並びになっている装置にX線CTの機能をもたせるために回転ステージをユニット化して取り外しができるようにしたもので採用される方式です。
従って、分類としては下記のようになりますが、回転ステージが水平方向に取り付くため、大きなサンプルを取り付けることが難しく、回転軸が自重や重力の影響を受けるため、同じX線源と検出器を使用した横照射型のCTと比較すると分解能(解像度)がやや低下します。
X線出力 | 観察対象 | |
---|---|---|
(高分解能/高精細)X線CT | 20kV~160kV | 半導体、電子部品、1cm以下の樹脂材料(GFRPやCFRP,コンポジット剤等) |
傾斜CT

傾斜CT型の3DCTは主に実装基板/PCB、ウェハなど透過(レントゲン)撮像をメインとした、装置上部もしくは下部にX線源とX線検出器が縦並びになっている装置で板状のものを非破壊で断層像を得る手法となります。

CT像を得るための条件は一定のX線出力で、グレー階調にて黒(0)を除く、明度(濃度)データを取得しなければなりません。上図のように立体物で個片のものであれば、奥行き(X)は90°回転したときに高さになります。この時の投影像がグレー階調であれば、CT像を構築することができますが、板状の場合は奥行き(X)が90°回転し、高さとなった時にX線が透過しない現象が発生し、黒(0)やその近傍値となります。(奥行きから高さへの変化をアスペクト比と呼びます。)そのため、再構成の際にノイズ(アーティファクト)となってしまうため、CT像を構築することができません。
傾斜(斜め)CTの仕組み
傾斜(斜め)CTは検出器を角度をつけて斜め方向から見ることで、板状のものが立体的に見える投影像を利用して、試料を水平に回転させることで、断層像を得る手法です。

直交CTの場合

直交CTは試料を回転させることで、高さのデータを得ることができるので、縦横高さの比率は同じ(等方位)になります。レントゲン像(2次元/2D)と比較しても、X線源に近いほうが大きく見え、遠いほうが小さく見える現象がないため、ボクセルを基準とした計測を行うことが可能です。
傾斜CTの場合

傾斜CTの場合は高さの情報が検出器を斜めで見た時の高さデータしかなく、情報が欠落するため、平面の縦横のXYの位置関係は良いのですが高さ(体軸)のZ軸は異方位(非等方位)となります。従って、X/Yの断面像は上図のように変形します。傾斜CTはZ方向の断層像(レイヤー)を得ることを主としています。(ラミノグラフ)断層像のスライス厚は幾何学倍率や得られる高さ情報、ステージの回転精度、プロジェクション数(360°を何分割して投影像を得る数)などに依存をします。
X線CT装置の種類とメリット/デメリット
直交CT(縦照射型) | 直交CT(横照射型) | 傾斜CT | |
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仕組み | 検出器は0℃の状態で、X線の照射方向に対し試料を直交した状態で回転させる | 検出器を斜め方向で固定し、ステージと試料を水平方向に回転させる | |
メリット | ・情報量が多く、鮮明な画像取得が可能 ・分解能が高い |
・情報量が多く鮮明な画像取得が可能で分解能が高い ・試料の自重による影響を受けにくい ・高い回転精度での画像取得が可能 |
・大きい試料でもCT撮像が可能 ・ステージに試料を置くだけでCT撮像が可能 |
デメリット | ・大きい試料には不向き ・試料のセットが必要 |
・大きい試料には不向き ・試料のセットが必要 ・ステージが無いため、経過観察に手間がかかる |
・情報量が少なく、分解能が低い ・ノイズが多い |
X線CTでできること
- 非破壊で試料の任意の方向の断層像が得られる。
- 3Dモデルが構築できる(サーフェイスレンダリングやボリュームレンダリングを使用した3次元表示)
- レントゲン(透視)画像よりも測定に優れている(直交CT)
専用の解析ソフトを使うと- 2次元断層画像計測:距離、角度、内径寸法、面積判定など
- 3次元画像の計測:内径寸法計測/表面フィッティング(平面、円柱、球面)/体積判定/繊維配向など
※解析用のソフトは様々
- サーフェイス座標やポリゴンデータ等を出力でき、CADや3Dプリンターなどに反映できる。(STLファイルなど)
=リバースエンジニアリング等に使用されています。