2025年6月号
これまで3回にわたりバーコードの基礎や機器選定、読取環境の整備について紹介してきました。最終回となる今回は、実際の製造業・物流業の現場で発生しがちな導入の失敗パターンを整理し、その回避方法を紹介します。また、具体的な成功事例と、RFIDとのハイブリッド運用例を紹介し、導入の参考にしていただければと思います。
代表的なバーコード導入の失敗例
バーコード導入プロジェクトでは、事前の検討不足や誤った設計によりトラブルが発生するケースがあります。以下に代表的な失敗パターンを挙げ、その原因と回避策を解説します。
印字品質やコード設計の不備による読取不良

バーコードの印字が不鮮明だったり、適切なコード規格に則っていない場合、スキャナが読み取れず運用に支障をきたします。例えば、レーザーマーカーで刻印した2次元コードが顧客側で読み取れずクレームとなった事例では、出荷前に印字品質検証を行っていなかったため納品後の対応コストが発生しました。対策として、コードのサイズ・解像度やコントラスト、余白(クワイエットゾーン)などを規格に沿って確保し、必要に応じて印字検証機で品質をチェックすることが重要です。また、コード内容の桁数・構成ミスや重複発行にも注意が必要です。
現場環境・機器選定のミスマッチ

使用環境に適さない機器やコード方式を選定すると、読み取りエラーや機器故障が頻発します。例えば、金属部品に直接刻印するDPM(ダイレクトパーツマーキング)コードは通常のスキャナでは読取りが難しく、特に基板や小さな部品などに刻印される極小DPMは、汎用的なスキャナでは読み取りに時間がかかったり、読取不可となる場合が多いです。極小DPMや印字薄の難読マーキングなどに対応する高性能スキャナの使用が必要となります。
また、工場内の粉塵・油滴環境や静電気対策が必要な現場で一般仕様の機器を使うと誤作動や故障リスクが高まります。近年は電子部品製造などでESD(静電気放電)対策が必須となっているなど、必要に応じて防塵・防静電・防爆対応といった製品選定が欠かせません。現場の温度湿度や汚れ環境、対象物の材質・表面状態を洗い出し、それに適合した堅牢型・特殊対応モデルの機器を選ぶことが求められます。


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運用フローと現場教育の不備

現場の作業フローに合わない運用になっていると、せっかくのバーコードも使われないという失敗につながります。例として、フォークリフトでパレットを運ぶ倉庫作業で、毎回降車してバーコードを読み取る手順がルール化されていたケースでは、導入当初は順守されていたものの、繁忙期に入ると「降車→乗車」の繰り返しが作業者にとって大きな負担となり、やがてスキャンが省略される事態が発生。結果、在庫差異が増幅し、誤出荷も増加してしまいました。このように運用に負荷がかかる設計では現場定着しません。
また、新システム導入時に現場オペレーターへの教育不足や操作手順の検証不足があると、機器を使いこなせず誤った運用やエラー放置を招く恐れもあります。対策として、導入前に現場フローを十分シミュレーションし、操作性の評価や現場教育を徹底することが重要です。可能であれば少数の機器で試験導入(PoC)を行い、読取精度や作業負荷を事前検証しておくと安心です。
以上の失敗例を踏まえ、バーコード導入を成功させるには、要件整理(扱うコード種類・数量、品質基準)、適切な機器選定(環境耐性や性能)、現場実証による検証(エラー率・操作性の確認)を入念に行い、現場に即したシステム設計をすることが肝要です。
バーコード導入事例
次に、上述のようなバーコード導入の課題をクリアした当社製品を用いた成功事例から見てみましょう。ここでは製造現場における代表的な例を紹介します。
製造現場事例「混流生産ラインの安定稼働」
ある自動車部品メーカーの工場では、混流生産ライン(複数製品を同一ラインで製造)で部品識別のためDPM(ダイレクトパーツマーキング)の2次元コードを使用しています。以前はピント調整が難しく読取エラーが多発しライン停止を招いていましたが、当社製のオートフォーカス機能搭載固定式スキャナ「MCR-F1000」を導入した結果、読取率が改善され、ライン停止時間を90%以上削減できました。
製造現場事例「インライン印字チェック機能で不良流出ゼロ」
また、別の製造現場では、刻印品質の揺らぎによって一部の Data Matrixが読み取れず、そのまま次工程へ流れ込む危険がありました。ここでも固定式スキャナ MCR-F1000が採用されました。MCR-F1000 は インライン印字チェック機能 を備えており、ラインを流れるワークごとにシンボルのグレードをリアルタイムで判定します。
検証結果はワーク単位で蓄積され、バッチ終了時には PDF レポートが自動生成されます。品質保証部門はオフィスからでも即座に検査結果を閲覧でき、不良発生の傾向をデータで把握できるようになりました。導入後、ライン停止を伴う抜き取り検査は不要となり、検査工数は 60% 削減。不良シンボルの流出は年間 4,000件からゼロに減少し、生産ラインの安定稼働と品質保証の両立が実現しています。

物流現場事例「車載端末とロングレンジスキャナで降車不要に」
作業フローと運用面の課題を解消した例として、フォークリフトに搭乗したままバーコードをスキャンできるシステムがあります。ロングレンジ対応スキャナとフォークリフト専用の車載端末を組み合わせることで、オペレーターが降車する手間をなくし、移動時間を短縮。作業効率と安全性が飛躍的に向上しました。さらに、システムとリアルタイムで連携するため、入出庫実績の登録負担が軽減され、管理者は在庫状況を即座に把握できます。その結果、在庫差異や欠品リスクも大幅に低下しました。

当社ラインナップには、フォークリフトに RFID リーダーを搭載し、荷物の積み降ろしと同時にタグを自動で読み取る「UHF フォークシステム」もございます。ロケーション情報や入出庫管理を半自動化でき、さらなる業務の効率化に貢献します。
RFIDとバーコードのハイブリッド運用
バーコードとRFIDは、それぞれ異なる強みを持つ自動認識技術です。バーコードは低コストかつ誰でも目視確認できる利点があり、RFIDは電波による一括読取や非接触運用が可能という利点があります。製造業の現場では、両者を組み合わせることで相乗効果を生むハイブリッド運用が注目されています。例えば、製造ラインの部品トレースにおいて、個々の部品にはバーコード(または2次元コード)を印字しつつ、部品を載せるトレイや搬送用パレットにRFIDタグを取り付けておく方法があります。作業者はバーコードをスキャンして個別品目の識別や検品を行え、ライン上ではRFIDリーダーによりパレット単位で自動的に所在管理や履歴収集が行われます。こうしたハイブリッド運用により、詳細データの確実性(バーコードによるエラー低減)とプロセス全体の見える化(RFIDによる自動追跡)を両立でき、生産現場のトレーサビリティと効率が一段と向上します。
おわりに
当社は、バーコード、RFID双方のノウハウで現場・システムを俯瞰し、設計から運用まで最適化するお手伝いをいたします。バーコード、RFIDシステム導入や運用でお悩みの際は、どうぞお気軽にお問合せください。

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