X線の拡大倍率と分解能(解像度)

X線で撮れる画像の特長

影絵

X線の透視(透過)撮像はX線発生器(X線源)を光源とした影絵になります。

可視光線の影絵と違うところはX線は物質を透過するので、透過していない(吸収された)ものの影が写ることになります。

X線焦点(フォーカス)と焦点サイズ(スポットサイズ/フォーカスサイズ)

X線の光源はX線焦点(フォーカス)と呼ばれ、フィラメント(陰極)から出た電子線が、ターゲット(陽極)に衝突した箇所がそれにあたります。X線焦点は点光源で、その大きさは焦点サイズ(スポットサイズ/フォーカスサイズ)と呼ばれています。焦点サイズは慣例的にミリフォーカスは0.1mm(100μm)以上、マイクロフォーカスは100μm未満、ナノフォーカスは1μm以下と分類されています。その中でマイクロフォーカス/ナノフォーカスX線発生器を軟X線と呼ぶ場合もあります。これらには明確な定義はありません。

FOD(Focus to Object Distance)とFID(Focus to Image Distance)

影絵の場合、試料の投影像を大きく写したい時は試料を光源に近づけるもしくはスクリーンを光源から離すことになります。

FOD(Focus to Object Distance)とFID(Focus to Image Distance)

X線も同じでX線焦点から試料までの距離をFOD(Focus to Object Distance)、X線焦点からX線検出器までの距離をFID(Focus to Image Distance)と呼び、FODが小さい(試料がX線焦点に近い)、FIDが大きい(検出器がX線焦点から遠い)ことで投影像の倍率が高くなります。この倍率を幾何学倍率と呼び、FOD:FID=1:2の場合は幾何学が2倍ということになります。

FODはX線発生器の発生の種類(反射型/透過型)やX線発生器の形状、試料の形状で近づけられる限度があります。

また、FIDはX線も光と同じ性質なので距離に比例して減衰する、検出器の感度によって距離を離す限度があります。

投影像の見え方

可視光の場合は光源側の影だけが見えていますが、医療用のレントゲンのような平面(2D)透視画像ではX線焦点側の倍率が高く、検出器側は倍率が低くなるため、下図のような長い筒状のような試料の場合、X線焦点(光源)に近い側が大きく見えて、検出器側が小さく見えます。(向こう側が透視で見える)

投影像の見え方

この傾向は拡大倍率を上げる、極端に高さ/長さがある試料で顕著になります。

レントゲン的な平面(2D)透視検査での距離などの計測は不向きで、あくまでも定形的に観察をすることを目的とします。しかしながら、計測を行う場合は予め、距離がわかるものを計測もしくは、位置関係からの計算上のキャリブレーション値(画素/mmなど)を決めて距離計測の基準とします。 一方でX線CT(3DCT)検査では断面像をつくるためこの問題を解決しています。

X線焦点(フォーカスサイズ)と解像度(分解能)

X線は光源として点光源です。X線はX線焦点から一定の角度であらゆる方向(放射状)に照射されます。X線発生器の種類によって照射される角度(照射角)は異なりますが一般的には反射型は照射角が狭く、透過型は広いとされています。(※)
この角度とX線検出器の撮像範囲でX線発生器~X線検出器間の距離がある程度決まります。

試料を拡大観察をする場合、X線焦点が大きいと左図のように試料の輪郭をあらゆる方向から投影する事になるので輪郭がぼけます。X線焦点が小さければ、X線の照射される方向が限定されるので輪郭がはっきりしたシャープな画像を得ることができます。

メリットデメリット
焦点大X線量が多いので明るい倍率を上げた時にボケが大きい
焦点小倍率を上げた時にボケが少ないX線量が少ないと暗い
焦点サイズの違いによるメリットデメリット

X線装置での解像度(分解能)は単純にX線発生器の焦点サイズとX線検出器の解像度の能力だけで決まるものではなく、総合的な判断が必要となります。
総合的な判断には実際に見たいサンプルが見えるということもありますが、マイクロチャート(日本検査機器工業会X線マイクロチャート)などを用いて、光学カメラの解像度を測るようなラインペア(LP)が分解して見えることを
確認される方が良いでしょう。

※反射型でも広角度照射のX線源はございます。

マーストーケンソリューションの分解能(解像度)の定義

マイクロチャート

X線装置性能の表記は各メーカーまちまちですが、弊社では日本検査機器工業会で販売しているマイクロチャートなど誰でも入手可能なチャートを利用してラインペアが分解して見えることを分解能として表記をしております。例えば、X線焦点1umと表記してある場合、チャートの1umのラインペアが分解して見えるとは限りません。実際の焦点は1umよりも大きい場合があり、画像がぼけて分解できない事もあります。 X線源の焦点サイズや電子線の太さ=分解能(解像度)ではありません。

「日本検査機器工業会 JIMAチャート RC-02」はこちら>

FODとFID解説

■倍率と倍率に関わる用語

FOD:Focus to Object Distance X線焦点から試料までの距離

FID :Focus to Image Distance X線焦点からX線検出器までの距離

■倍率について

X線源のX線焦点(点光源)から発したX線は、試料を透過してX線検出器の入力面に拡大投影されます。 幾何倍率Mは、試料の大きさに対するX線検出器入力面上の投影像の大きさの比であり、M=FID/FODで幾何学倍率が計算できます。 X線焦点~X線検出器間の距離が一定のときはX線焦点に試料を近づけるほど、幾何倍率は大きくなります。 総合倍率M0は、試料に対するモニタ上の画像の拡大倍率であり、X線検出器の入力画像の大きさに対するモニタ画像の大きさの拡大倍率をM1とすると、M0=M×M1となります。