脱物流クライシスに向けた次世代の物流システム:フィジカルインターネットとは?

Vol.217 2023年6月号

 経済産業省および国土交通省は、2040年を目標とした物流のあるべき将来像として、「フィジカルインターネットの実現に向けたロードマップ」を策定し、2022年3月に発表しました。今号では、今後の物流業界に大きな変革をもたらす可能性があるフィジカルインターネットについて紹介します。

物流クライシスとその要因

 現在の日本は物流クライシスと呼ばれる様々な問題に直面しています。2010年代後半以降、物流コストは急上昇しており、その主な原因はe-コマースの拡大に伴うラストワンマイルのコスト増加、多頻度小ロット輸送の増加などが挙げられます。

(図1)道路貨物輸送・宅配便のサービス価格指数の推移

 さらに、労働環境の厳しさからトラックドライバーの人手不足が深刻化し、その収入は80年代以降上昇せず、さらに物流コスト増大にもかかわらず全産業平均を下回っています。こうした状況は既存の物流システムが時代にそぐわなくなってきたことを示しています。

トラックドライバーの労働環境改善の必要性と物流コストの増大

 トラックドライバーの人手不足は問題で、特に平均年齢が高く、労働環境の厳しさから若者の進出が進まない状況があり、労働環境の改善と働き方改革が求められています。対策となる働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって、物流コストはさらに上がると予想されています。

 さらに、脱炭素化の動きも物流コスト増大の一因となり得ることが予想されており、物流コストの上昇にとどまらず、物流サービスが提供困難になる可能性も否めません。こうした状況は、物流業界にとって大きな課題をもたらしています。(2024年問題)

物流システムへの影響とその対策

  これらの問題が放置されると、2030年までには物流需要の約36%が運べなくなるとの試算もあり、経済損失としては最大で10.2兆円と試算されています。経済成長が物流の制約によって阻害される可能性が出てきました。対策が急務となっています。

(図2)物流の需給関係の模式図

これらの課題を解決するために、「フィジカルインターネット」という新しい物流システムに期待が集まっています。データがパケットに分割され、最適なルートで送信されるデジタルの世界を、物流に応用することで、効率的で柔軟な物流を実現します。

フィジカルインターネットの概念
(図3) フィジカルインターネットの概念

従来の物流におけるムリ・ムダ

 今後の物流システムの改革は、物流コストの抑制とトラックドライバーの待遇改善や、運賃の引き上げの両立を目指すものでなければなりません。ですが、運賃を上げ、労働環境を改善すると物流コストが増加します。これを抑制するためには、物流コストに含まれる非効率的な部分を削減しなければなりません。

フィジカルインターネット以前の事業者専用のネットワーク

従来の物流は、各事業者が独自の車両を用いて直接の発着地間を結ぶという方式が主流でした。これは、物流の多頻度・小ロット化により積載効率が低下する問題を引き起こし、実際に国内のトラック積載効率は40%を下回っています。

 つまり、輸送能力の大半が未活用という「ムダ」が発生している現状にあります。また、物流の計画性の欠如による無駄な荷待ち時間の問題など、物流業者と荷主が連携して取り組むべき課題もあります。

フィジカルインターネットが目指す物流の未来

フィジカルインターネットによる事業者や業種分野を超えたネットワーク

 フィジカルインターネットの実現により、輸送リソースが不特定多数の事業者間で共有化されれば、物流倉庫やトラックは、最適なルートを見つけ、共同配送を行うために、共同で利用されます。トラックはハブの役割を担う共有化された物流拠点で接続され、貨物はハブ間での幹線輸送とハブから目的地までの端末輸送網を組み合わせて運ばれます。 これにより、事業者間での貨物・ルートの集約や、エリア配送の共同化が進み、積載効率の大幅な向上が期待されます。

 ただし、この新しい輸送方式は、経由地が増えることで輸送・積替時間や荷役コストが増加し、荷物の損傷リスクが上がるなどの新たな課題を生む可能性があります。そのため、フィジカルインターネットでは、これらの課題を最小限に抑える工夫として、「コンテナ(規格化された輸送容器)」「ハブ(物流拠点がコンテナの結節点となる機能)」「プロトコル(輸送情報共有)」の規格の標準化が求められています。

 ハブでの貨物の積み替えを効率的に行うためには、貨物の外装サイズや取扱い条件の規格化が求められます。物流作業の機械化やロボット化によって、これらの操作を高速で、安全に、そして効率的に行えるようになることが期待されています。

 さらに、輸送情報(トラックのキャパシティや貨物の量、目的地等)をリアルタイムで把握し、それに基づいて最適な配車とルートを決定することで、トラックの積載効率をさらに向上させることが可能です。トラックバース予約システムによって無駄な荷待ちを無くすこともできます。

 ここでは、RFIDなどのIoT技術により、リアルタイムでトラックや荷物の状況をデータ化し、共有することが重要となります。

おわりに

  当社では、倉庫でのロケーション管理を効率化するUHFフォークシステムや、RFIDによる一括検品システム、パレットやカゴ車の所在管理、トラックの入退場管理など、ヒトやモノの動きを可視化し、物流効率化を支援する機器・システムの導入実績が多数ございます。 今後もバーコード、RFID、画像認識を用いてお客様の物流効率化やDX推進をサポートしてまいりますので、是非お気軽にご相談ください。