Vol.202 flags 2022年3月号
ICカード、ICタグを使うRFID技術や、バーコード、2次元コードが“自動認識”では有名です。しかし、近年では顔/指紋認証等の生体認証(バイオメトリクス)も進化を遂げ、スマートフォンや入退室管理、銀行系の認証などに使われています。皆さんの生活の中にも触れる機会があるのではないでしょうか。今回は、自動認識の技術、画像認識と生体認証についてご紹介いたします。
自動認識における画像認識とは
画像認識とは、画像から特徴を抽出し、対象物を識別するパターン認識技術の一つです。具体的には、画像に映っている物体は何であるかという判断をコンピュータに行わせて画像を認識させ、認証に用いることです。2次元コードの読取はもとより、後半ご説明する生体認証(バイオメトリクス)にも技術的には大きな意味での画像認識を活用したものが多くあります。
FA分野での活用
FA分野でも、単純にラベルに印字された1D/2Dシンボルを読み取るだけではない画像認識技術が展開されています。 もう既におなじみなのはDPM(ダイレクトパーツマーキング)です。1D/2Dシンボルを金属や樹脂の部品にレーザーで刻印したり、ドットピンで打ったり、薬品の化学反応でマーキングして刻み込みます。中には非常に読み取り難いシンボルになることもありますが、各種の画像認識技術を応用して、取得した画像から情報を読み取ります。 さらにそこにパターンマッチング、OCRといった技術を併用してより高度な難読1D/2Dシンボルの読み取りや、OCRによる数字や文字の認識を行うことが出来ます。パターンマッチングとは、あらかじめ画像パターンを登録しておき、読み取り対象の画像が登録したパターンの画像とどの程度一致するかを判断する処理です。OCRは画像から文字や数字を認識してコンピュータで利用できる文字コードのデータに変換する処理です。 次に当社のMVF-500シリーズでの応用例を紹介します。
例1:パターンを元にした位置決めによる角度補正
読み取り対象物は、きちんと同じ向きで流れてくるとは限りません。読み取り対象と同じ画像の中の何らかのパターンを利用して相対的に読み取り対象の文字やシンボルの位置を決め、読み取りを行う例。
例2:複雑な処理パターンの例
パターンマッチングでロゴ印字品質の簡易検査をしつつ、位置決めに使用してシンボルの内容の特定部分と文字の印字内容の特定部分が合致しているかの確認を行い、OK/NG判定。今後はAIの高度化、ディープラーニングの進歩も併せて、画像認識技術の発展と様々な分野での活用が期待されます
生体認証(バイオメトリクス)とは
生体認証(バイオメトリクス)とは、生物個体が持つ特徴により、個人を特定する技術です。その中でも①身体的特徴を応用したもの(生物学的特徴)、②行動的特徴を応用したものの2つに分類されています。 具体的に説明すると、①は先天的なものと後天的なもの、つまり、生まれ持った特徴部分を使って認証する技術です。顔や指紋の他、静脈、虹彩、掌形、網膜、耳介、DNA等があります。②は、人の行動的な特徴を応用して認証する技術です。手書きの署名やキーストローク、音声(声紋)、歩容といったものがあげられます。また共通して必要な性質としては、
A 普遍性:誰でも持っている
B 唯一性:万人不同性
C 永続性:終生不変性
を備えていなければなりません。
表1 生体認 証で用いられる特徴
種類 | 生体情報と特徴量 |
指紋 | 指紋の特徴点の位置・角度・パターンなど |
顔 | 顔の輪郭、目や鼻等の形状や位置など |
静脈 | 手や指の静脈パターンなど |
掌形 | 手の大きさ、長さ、厚さ、比率など |
虹彩 | 目の虹彩(アイリス)の紋様のパターン |
音声 | 音声パターンの時系列特徴 |
署名 | 署名の字体や署名時のペンの動き、筆圧、角度など |
その他 | 耳介の形、キーストローク、網膜の血管パターン、歩き方(歩容)、DNAなど |
生体認証が利用される背景
これまで使われてきた認証技術の多くはパスワードや磁気カード、ICカードが殆どでした。しかし、情報化社会の進展と多様化により、様々なサービスで電子的に本人確認が必要になる場面が増えてきました。この「電子的な本人確認」が必要な場面では個人の財産/安全が直結していることが多い為、偽造や盗難、紛失の心配が殆どない本人確認手段として使われ始めました。
生体認証のメリット
では、どのようなメリットがあるかをご紹介いたします。
・セキュリティの向上
生体認証は個人特有の身体的特徴を用いるため、犯罪者からのなりすましを防ぎます。偽造やコピーが困難で、事前に登録された情報も多くの場合、暗号化して保護されるため、情報を簡単に盗まれることはありません。
・利便性に優れた認証作業
自分の体の一部を用いて認証をするため、サイトやアプリ毎にパスワードを使い分ける必要がなく、パスワードを忘れる心配がありません。
・多くの認証作業の場面で有効
コンサート会場や金融機関、空港など、多数の人に認証作業を行う現場では非常に有効な選択肢で、既に導入・採用が進んでいます。
多要素認証でのレベル向上
しかし、メリットばかりではありません。生体認証にも、考慮しなければならない点があります。
・認証精度は100%ではない
高い精度で認証できますが、100%ではありません。その日の体調の変化などで読み取れないケースがあったり、指紋の場合、指先の怪我などで認証できないなどのケースがあります。 メリットが多い反面、不安要素も併せ持つ技術ですが、従来の認証技術よりもセキュリティや利便性など、多くの面で高いレベルであることは間違いありません。そのため、顔と指紋の認証といった、いくつかの方法と合わせて認証するマルチモーダル(複合化)技術を用いることで、認証精度をさらに上げることも様々な場面で実施されています。
おわりに
今回は画像認識、生体認証の技術をご紹介いたしました。コロナ禍の下、自動認識を導入したい場面は、多くあるのではないでしょうか。生産能力の向上や業務効率の改善などでお悩みの点等ありましたら遠慮なく当社までお問い合わせください。確実なソリューションをご提供いたします。
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