バーコード検証機の基礎知識(医療編)

2024年9月号

 バーコード検証機とは、印字されたバーコードが安定して読み取れるように、規格通りの品質で印字されているかを確認するための機器です。バーコード検証機を使用すると、印字品質を数値化することができます。今号では、バーコード検証機のご紹介と併せてバーコードの品質や、GS1運用ルールについて基礎的なところをご紹介します。

バーコードの印字品質の重要性

 では、なぜバーコードの印字品質を確認する必要があるのでしょうか?現在、バーコードの普及に伴い、バーコードリーダーもインターネットで簡単に購入できる時代となっています。気軽に手に入れることができるのは良いことですが、残念ながらバーコードリーダーの機種によって読み取り性能は様々であり、安定して読み取れないトラブルも市場では発生しています。読み取りに関するトラブルが発生した際、バーコードの印字品質が悪いのか、バーコードリーダーの読み取り能力が問題なのかが議論の対象となります。このようなトラブルを解決するためには、バーコードの印字品質が基準を満たしているかを確認することが必要です。

ISO規格とGS1コード

 バーコードの印字品質は、ISO15415(2次元シンボル)およびISO15416(1次元シンボル)で定められています。バーコードの品質を確認するためには、このISO規格で定められた基準で検証し、点数を導き出す必要があります。この基準を満たすためには、光学的配置(検証対象に対する照明角度等)を満たしている機器で撮像された画像である必要があります。また、医療用医薬品で利用されるGS1コードについては、印字の品質以外にも、GS1で定められている運用ルールに則ってバーコードデータが作成されているかも確認する必要があります。 これらの要件を満たすのが、バーコード検証機「LVS-9510」(第1図)やハンディターミナルチェッカー「GS1-Checker」(第2図)です。ここでは、それぞれの製品の特長を紹介します。

第1図 バーコード検証機LVS-9510
第1図 バーコード検証機LVS-9510
第2図 GS1 Checker

バーコード検証機

  上述したように、バーコードの印字品質を確認するための機器です。一昔前はレーザー方式の検証機もありましたが、最近ではカメラ方式の検証機が一般的です。

 ここで注意しなければならないのは、「検証」と「検査」が異なるということです。「検証」とは、ISO規格で定められた基準で画像を取得し、各パラメータの品質を数値化することです。一方、バーコードの「検査」では、それぞれの基準で取得した撮像画像や検査基準に基づいて結果を導き出します。機器の選定を行う際には、この違いを理解したうえで選択する必要があります。

 バーコードの品質基準は、ISO15416では0.0~4.0の点数評価で定められています。以前はANSI (米国国家規格協会)のグレード評価(A~F)も採用されていましたが、ISO15416-2016改正に伴い、現在は点数評価のみとなっています。医療用医薬品では、印字品質1.5(C)以上が推奨されています。

 バーコード検証機の操作は非常に簡単です。検証機で取得した画像はパソコンに転送され、パソコンの検証ソフトで検証したいエリアを指定するだけで解析が行われ、結果が表示されます。また、解析結果はパソコンと接続されているレーザープリンタなどで、レポートとして出力することができます(第3図)。

第3図 検証機の操作手順
第3図 検証機の操作手順

 バーコード検証機が効果を発揮するのは、印字品質の結果が良かった時ではなく、悪かった時です。なぜなら、検証機は品質結果を導き出すだけでなく、不良解析の手助けもできるからです。項目ごとの不良個所やコントラスト、にじみなどを視覚的に表示させることができるため、対処方法が明確となり、印字品質を改善することができます(第4図)。

コントラストやにじみがわかる
(第4図)
項目ごとに不良箇所がわかる

GS1Checker

 医療用医薬品で利用されるGS1コードには、印字品質以外にも注意すべき点があります。 GS1コードには様々な種類がありますが、日本国内で流通する医療用医薬品の調剤単位および販売単位では、使用するGS1コードの体系が定められています。これには、GS1 DataBar Limited、GS1 DataBar Limited compositeCC-A、GS1 DataBar Stacked、GS1 DataBar Stacked compositeの4種類があります。しかし、過去には間違ったGS1コード体系でバーコードが作成された事例もありました。見た目ではコード体系の違いは判断しづらいことが原因と考えられます(第5図)。

第5図 間違えやすいGS1 DataBarの例
第5図 間違えやすいGS1 DataBarの例

 また、GS1コードにはアプリケーション識別子(AI)という属性情報を持たせたデータの運用ルールに則って、バーコードを作成しなければなりません(第6図)。

第6図 代表的なアプリケーション識別子
第6図 代表的なアプリケーション識別子

 これらのデータチェックを、検証機よりも手軽に行うために、マーストーケンソリューションでは2012年からハンディターミナルのチェッカー「GS1Checker」を販売しています。令和4年12月1日に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」に伴う、バーコード表示の義務化に合わせて、GS1-Checkerをリニューアルし販売を開始しました。医療機器や体外診断用医薬品はルールが異なるため、「GS1Checkerfor MD」もリリースしています。

 GS1Checkerではバーコードを読み取るだけで、専用のソフトが自動的に正しいコード体系でバーコードが作成されているか、アプリケーション識別子の属性情報の運用ルールが正しく守られているかをチェックします。

 読み取ったデータは、端末の画面上で属性情報ごとに見やすく表示されます。もしデータに間違いがあった場合は、エラー内容が画面に表示されるので、現場で簡単に確認することができます(第7図)。また、添付文書の電子化に対応するため、添付文書情報の表示にも対応しています。インターネット接続ができる環境であれば、GS1コードの商品コードから、PMDAに登録されている添付文書情報を表示・閲覧できるようになっています。

第7 図 GS1 Checker のエラー内容サンプル画面

おわりに

 バーコード表示の義務化と、添付文書の電子化が法制化されたことにより、今まで以上に印字品質とGS1コードの重要性が増しています。「たかがバーコード、されどバーコード」です。これからの医療業界でバーコードの活用が広がるためには、バーコードリーダーやバーコードシステムの技術向上が必要です。ただし、安定した運用を行うためには、基本的なバーコード品質が重要であることを理解していただき、ここで紹介した機器が品質向上に役立つことを願っています。

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