VOL.166 flags 2019年3月号
自動認識技術は、産業の効率化や生活を豊かにする必需品ですが、データの読取装置自体の優劣の方に注目が傾きがちです。しかし、モノと情報の一元化を可能にする為の媒体としてラベルも大変重要な働きをしています。
今号は、最近のラベル情報についてご紹介いたします。
ラベルの構成
読者の皆様もお馴染みである宅配便などで荷物を受け取ると、そこに貼られた数々のシール状のラベルを目にされると思います。そのラベルには、人が目視で理解できる住所や製品名と言った情報は勿論のこと、モノに付けられた符号をバーコード化した情報が印刷され、自動認識技術により物流の最適化に使われています。最近では、ラベルの裏側にICチップが組み込まれているものもあります。
一般的なシール状のラベルは、図1のとおり、情報を印字する表層紙部分と台紙等で構成されています。表紙の裏側に糊(粘着材)がつけられており剥離紙とも呼ばれ剥離加工がされた台紙で作られています。最近は、セパレスとよばれる台紙がないタイプのものもあります。
ラベルの姿は、1枚のシート状のカット紙、巻かれたロール、シートが折りたたまれたファンフォールド紙(折り形状)などがあります。

ラベルの素材
<パルプ系>
サーマル紙:熱発色するため、インクリボンが不要です。もっとも低価格でよく使用されます。ただ長期保存には不向きです。また熱が加わると黒く変色してしまい印字された文字が読み取れなくなる欠点があります。ラベル以外にもスーパーやコンビニのレシート等も殆どがサーマル紙が使われています。
コート紙:熱転写方式、インクリボンを使用。時間がたっても印字が薄くなったりしないので、サーマル紙より長期間使用できます。
<フィルム系>
合成紙(ユポ紙):熱転写方式。
合成紙サーマル(ユポサーマル):熱発色するので、インクリボン不要。合成紙は紙ではないので破れにくく水などで濡れるような場所でも利用されます。
ペット紙:熱転写方式。白色以外に、透明、金色、銀色のものが作成可能。紙でなくPETなので丈夫で、銘板などに使用されます。
糊選びのポイント
糊(粘着材)もさまざまなものが開発され使用されています。
・普通粘着(一般強粘):標準タイプ。
大半のラベルで使用され、剥がせないものです。無理に剥がすとラベルが破れたり、被着体(段ボール等)を傷つける可能性があります。

・強粘着:永久に貼り付ける用途。野外の機器の外面や銘版などに使用。このときラベルはパルプ系ではなくフィルム系のものが使用されることが多くあります。
・弱粘着:貼ったあとで剥がせるもの。
・再剥離粘着:糊残りが少なく剥がしやすいもので、短期間に剥がして張り替える用途に使用されます。各メーカーによって粘着力は変わりますので使用する前にテストが必要です。
・冷食用/ 冷凍用粘着:-20℃の冷凍倉庫では普通の糊だと剥がれやすく使えませんが、冷凍食品などに使用するために-20℃での保存にも耐えられるものです。
・超強粘(ボンベ用)・トイシ用/超粗面粘着(壁面・木材用):粘着力が最も強く一度貼ったら剥がせません。被着体によって使いわけます。
・特殊粘着糊:訂正用粘着糊、シボ面対応、静電気対応、改ざん防止用などなど
ICラベル(RFIDラベル、ICタグ)

ラベルの裏にICタグのインレイ(ICチップとアンテナ)を貼りさらにその上に糊をつけ貼れるようにしたものです。ICタグとしては一番多いタイプで、ICタグと聞いて直ぐに形状を思い浮かべられる方も多いと思います。
かつてはHF帯(13.56MHz)、UHF帯共同じ程度でしたが、近年UHF帯の方が非常に多く生産されています。
HF帯のものは長方形や正方形、細長い絆創膏のようなもの、あるいは丸型の形があります。
UHF帯は、比較的細長い長方形のものが多く、テープ状のものもあります。丸型、正方形はあまり見かけられません。
これらの違いは使用されている電波によるICタグ側の構造の違いによるもので、インレイの形がそのままICラベルの形に影響します。
ICラベルであっても、ラベル表面への文字やバーコードの印字ももちろん可能ですが、インレイの大きさ・形状で読取能力が変わってきますので、表面に印刷する内容にあわせて形状を小さくしようと思っても、できないことがあります。
ICタグは、中身が目では見えませんので、プリンタで、ICタグの中に書き込まれたデータの内容を文字やバーコードで印字することがよく行われます。
紙の下にICチップやアンテナがあるため、若干凸凹しているものが多く、きれいに印字がされないこともありますので、どんな内容をラベルのどのあたりに印字するかについては注意が必要です。
プリンタでICタグのエンコードを行い、その内容を文字やバーコードで印字することが良く行われています。
特殊なラベル
一般的な段ボール箱や商品に貼られるラベル以外にも、非常にたくさんの用途に対応したラベルが作られて活用されています。
・クリーンルームでも使えるラベル
塵を極限まで減らすクリーンルームでは普通の紙やラベルは使えません。この条件下では、発塵しないペット紙や、無塵台紙でできたラベルが使われます。
・熱に強いラベル
生産工程で熱処理がある場合、紙や普通のフィルムでは燃えてしまいます。このような場合には、2 ~ 300℃に耐える特殊耐熱フィルムのラベルがあります。さらにそれでも耐熱性が足りないという場合には、セラミックス基板に、セラミックスインクで、バーコードパターンを印字し、焼成したバーコードラベル「セララベル」があります。最高1400℃もの耐熱性を持っています。
・金属用ICラベル
ICラベルは段ボールや衣類、プラスチックなどは問題ないですが、金属に一般的なICラベルを貼るとうまく読めません。
従って、金属には金属用のICタグが使われます。多くの金属用ICタグは素材が堅い樹脂などでできており、従来は、プリンタで印刷は不可能でしたが、今は金属用ICラベルがいくつか販売されています。これらはプリンタに通して印刷もできます。普通のラベルのようにロール状に巻かれており、表面への印字出力やエンコードも可能です。糊がついていますので、台紙から剥がして対象の金属物に簡単に貼ることができます。

普段見慣れたラベルですが、色々な素材を組み合わせて、環境や条件に最適なものを選んで使用されています。特に糊は被着体や使用温度、環境などによって使用すべきものが変わってきますので注意が必要です。
当社では様々なラベルやサプライ品をご用意致しておりますので、お気軽に当社営業担当までご相談ください。