読んで役立つ無線通信の現状

VOL.017 2006年9月号

 私たちの日常には切っても切れない電波。TV、ラジオなどの放送電波に始まり、携帯端末で使う無線LANまでさまざまなものがあります。 無線ICタグの普及など、今後も無線通信はますます重要な役割を担っていくと考えられます。そこで今回は現在使用されている無線についてご紹介。

無線の基礎知識

主な無線の周波数帯

私たちの日常のなかで、電波はいろいろなところで利用されています。 テレビやラジオはいちばん身近な電波ですが、その他にも携帯電話、地域防災無線、空港管制塔の無線通信、 果てはペースメーカーのパルス無線や気象レーダー、科学衛星のデータ通信まで、有線でつながっているものよりもはるかに多くの電波が地球を飛び交っている状況です。

このように電波を使った無線通信が行われていますが、電波は総務省の管理下に置かれており、周波数帯はその目的に応じて割り当てられています(上図参照)。 電波にはいくつかの特性があります。周波数が高くなればなるほど通信速度は速くなり、データを電送する速度は増します。 主な無線の周波数帯

しかし、周波数が高くなるにつれて光に近い性質に近づくため直進性(指向性)が強くなり、遮蔽物があった場合は通信による影響が大きくなります。

逆に周波数が低くなると指向性が弱まるため、遮蔽物があっても電波が回り込みやすくなるため、通信が行いやすくなるということもあります。

自動認識システムで求められる無線の特性とは?

現在の自動認識システムにとっても無線技術はデータ通信の上で不可欠のものになっています。

もちろんテレビやラジオとは使用する目的が違うので、通信に求められる特性も違っています。 現在の自動認識システムではSS無線、RFID、Bluetoothという3種類の無線通信技術が使われていますが、それぞれの特長を説明する前に、 自動認識システムにおいての無線の使われ方をご紹介します。

無線通信は、物流センターなどから工場の生産現場まで、いろいろなところで使用されています。物流センターや倉庫では、入出庫管理にはじまり、 最後の在庫管理までを大変広い場所で行なうため、必然的にワイヤレス機器が選ばれるようになりました。 また有線タイプの場合、1台のスキャナーに対して情報を受けるためのPCが1台必要になりますが、例えばSS無線を使うと、 1台のホスト(PC)に対して複数台を接続することができるので、効率が良くなります(時には数十台ということもあります)。

また倉庫などの在庫管理以外でも、ケーブルを何メーターも引き回すことが大変な労力となるような現場ではワイヤレス(無線)を使用することが多くなってきています。 特に生産工程ではケーブル類を後から敷設することが難しい場合が多く、無線通信が好まれます。 またセル生産方式では、1セル内の作業管理を1台のPCで行うため、複数台のスキャナーを管理できる無線方式が選ばれる場合もあります。

ケーブル類の敷設不要、1台のホストで数台のスキャナを同時に使えるなど、素晴らしく便利に見える無線通信ですが、残念ながら欠点もあります。

第一に挙げられるのが価格の問題。無線機器は有線タイプと比べるとまだまだ高額なので、「無線は使いたいけど、価格がね…」 と無線導入が見送られて有線タイプで運用されるケースがあります。

欠点の二番目はセキュリティの問題です。無線通信にはデータが盗まれる可能性があるということです。通常、無線LAN機器にはセキュリティ機能があり、 データを保護していますが、さらに安全性を高めるためにデータの暗号化、アクセス制御など厳しいセキュリティポリシーを設定し、対策を取る必要もあります。

三番目は他の電波との干渉の問題です。SS無線が使用する2.4GHz帯にはBluetoothから電子レンジまで同じ周波数帯を使用しているため、 互いの電波が干渉する可能性があります。しかしバーコードアプリの場合、送受信するデータ量が基本的に少ないことと、ハンディターミナルなどの機器の無線出力が強いこと、 他の電波が混在する状況で使われるケースが少ないことなどの理由で、実際に問題になることはほとんどありません。 ただし強いノイズや金属にも干渉を受けることがあるので、企業によっては無線機器の使用を禁止しているところもあります。

このような欠点はあるものの、倉庫・物流業務に使用されるハンディターミナルの出荷台数は無線付きのタイプの伸び率が圧倒的に高く、 無線通信に対するニーズの高さがうかがえます。

無線通信、それぞれの特性

先ほどお話ししたとおり、自動認識システムでは現在、SS無線、RFID、Bluetoothの3種類の無線が利用されています。 ここではそれぞれの特長などについてお話ししましょう。

● SS無線

SS無線は、一般家庭からオフィス、工場まであらゆる分野で使われている無線LANでも中心的に使用され、無線を代表する技術になっています。SS無線の飛躍的な普及は、国際的な無線規格の標準化(IEEE802.11)と通信速度の高速化、無線機器の低価格化が大きな要因だと考えられます。 しかし、無線LANが身近になったために、安易に導入をした結果、トラブルが起こることも少なくありません。

● RFID (RF/ICタグ)

近頃では成功事例や大規模な実証実験が多くのマスメディアに取り上げられたことや、JR東日本のSuica(スイカ)やキャッシュレスで支払いをするEdy(エディ) の利用拡大によってRFIDの知名度は飛躍的にアップしました。しかし、まだまだ未解決の問題点もあり、導入を見送っているケースが多くあります。 導入を発表している会社でもRFIDのメリットとデメリットを十分に検討し、それでも導入する必要があったために踏み切っているのが現状です。

● Bluetooth

ワイヤレスのキーボードやヘッドフォンなどで使用されているBluetoothは、PCや家電製品の周辺機器接続用の無線技術として開発されました。 現在ではハンドヘルドスキャナーなどにも使用されていて、自動認識の世界でも認知が高い無線技術になりました。 SS無線に比べて導入が簡単で、Bluetooth機器はハンドヘルドタイプを中心に数多くの製品があります。 導入が簡単である一方、他電波との干渉の問題もあり、これからも改善を図る必要があります。

また無線通信の新たな技術にUWB(ウルトラワイドバンド)やミリ波といった超高速無線通信があります。 これらの新しい技術は、今後、自動認識技術への応用が期待されています。

 SS無線の規格と特長

規格周波数通信速度特長
IEEE802.11a5GHz6~54Mbps他の無線規格で使われていないので、障害が少ないと言われているが、新しい周波数帯のため、既存無線機器との互換性がなく、普及に遅れがある。雨や雷による障害が発生しやすく、屋外使用は推奨されていない。
IEEE802.11b2.4GHz1~11Mbps11aと同時期に規格化。既存の無線LAN機器も多く、圧倒的に普及が進んでいる。しかし、2.4GHz帯はBluetoothや他の無線規格で使われているため、干渉などの障害の確認が必要。
IEEE802.11g2.4GHz6~54Mbps11bを高速化した規格。上位互換は機器ごとに確認をとる必要がある。
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