VOL.089 2012年10月号
2008年9月から厚生労働省により「医療用医薬品の新バーコード表示」の第一弾が施行され、4年経った今年の6月29日には再度同省より適応範囲の拡大が盛り込まれた「一部改定通知」が発表されました。 前号では、主だった5つの改定ポイントに触れましたが後編の今号では、さらに詳しく医療用医薬品業界での新バーコード表示の基礎情報を解説いたします。
医療事故の防止とトレーサビリティ

医療品の取り違え事故の防止やトレーサビリティの確保を推進し、医療品の流通効率化を図る観点などから、2008年9月に厚生労働省が「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項」を通知してから4年が経過し、当初求められた新バーコード表示が必須となる項目において96%を超える表示率になり、必須表示項目では概ね全ての製品に表示されている状況まで浸透したことを受けて、今年の6月に「一部改正」が通知されました。
そもそものコンセプトは、医療用品の使用単位毎(例えばアンプル一本単位など)に製品を特定できるバーコードを表示して、それを機械的に読取することにより、1)機械的に製品を識別し、取り違えによる医療事故の防止を図る、2)製造・流通から患者への使用までの流れを記録することにより、トレーサビリティを確保する、という目的があります。
この「機械的に識別する」方法をとるための新しい改定ポイントが今回織り込まれています。
今までの普及における経緯とトラブルを次にまとめてみました。
改定の基礎情報とトラブル 1.使用するバーコード
“RSS コード”は正式名称を“GS1-Databar”に改名されましたが、製薬業界では、やっと“RSS コード”が周知された時期なので、「医療用医薬品の新バーコード表示改定」では、当面“RSS コード”で表現すると定めており、使用するシンボルは下記の4種類になります。
- RSS リミテッド
- RSS リミテッド合成シンボルCC-A
- RSS-14 スタック
- RSS-14 スタック合成シンボルCC-A
【トラブル事例】
RSSコードはRSS合成シンボルを合わせると、10数種類のバーコードが存在します。
見た目では見分けがつかない種類もあり、ガイドラインで定めていない種類のバーコードで印刷してしまい、出荷してから市場で読めない事が発覚しました。
改定の基礎情報とトラブル 2.アプリケーション識別子(AI)
データ要素 | 表記順 | アプリケーション識別子 |
---|---|---|
商品コード | 1 | 01 |
有効期限 | 2 | 17または7003 |
数量 | 3 | 30 |
製造番号または製造記号 | 4 | 10または21 |
AIは、大容量データ交換時のシンタックスルールとしてISO規格にもなっております。
商品コードや使用期限、製造番号など項目をデータ化したときに、各項の並び順やデータ長がわからなければデータは単なる英数字の羅列でしかなく、有効なデータとして使用することが出来ません。
そこで、データ内の各項目を誰もが識別できるように、各項目に分類コードを割り当てたルールがAI なのです。
(1)AIとはデータの意味を示す分類コードです。例えば“01”のAIがあれば、“01”の後ろに続くデータは14 桁の“GTIN”(製品コード)なのです、ではAIが“17”の場合、“17”の後ろに続くデータ何でしょう?・・・6桁の“有効期限”です。(参照:下表)
(2) データの区切り文字<GS>の使い方
GTIN(商品コード)や有効期限は桁数が固定で決められているのでデータの長さが判断できますが、製造番号や数量など、メーカーや製品によってバラバラな桁数で運用されている項目はデータの終りが判断できません。
この様にバラバラな桁数(可変長)のデータ項目の場合は、データの最後を判断できるように<GS>(グループセパレータ)を付加します。
※<GS>は印刷や表示できる文字ではない制御コードです。
【トラブル事例】

AIの誤った使い方で、下記のような印字不良が発見されています。
・バーコードデータにも括弧をつけて印刷してしまい読み取れない。
印刷時にはAI は(括弧)で囲われていますが、バーコードデータ内には(括弧)は含まれていません。人が見やすいように見える文字だけ加工して印刷されています。
・有効期限を8桁で印字してしまい読み取れない。
有効期限はyymmddの6桁で定められています。有効期限が“年月”までの場合は日付を“00”で印刷します。
・有効期限を5桁で印字してしまい読み取れない。
年、月、日が1桁の場合は、“0”で埋めて2桁で印字してください。
・全体データの最後の場合は<GS>は付加しません。
可変データの最後には<GS>を付加しますが、バーコードに印字する全体データの最後の場合は<GS>は付加しません。
改定の基礎情報とトラブル 3.GTINとは14桁の商品コード
PI | データ要素 |
0 | 調剤包装単位 |
1 | 販売包装単位 |
2 | 元梱包装単位 |
13桁のJANで流通商品コードの管理は、14桁に統一する事になっています。“13桁のJAN”の先頭に“1桁の梱包インジケータ(PI)”を付加しただけです。
PI(0) + JAN(4972105010221)
↓
04972105010221
※8桁の短縮JANの場合は“0”で埋めます。
【トラブル事例】

・チェックデジットが違う。
PIが“0”の場合は、13桁のJANをそのままデータとして問題は無いが、PIが“1”もしくは“2”の場合はチェックデジットの計算結果が変わってしまうので、JANをそのままデータとしては使用できません。
PIの1桁とJAN先頭12桁の合計13桁でチェックデジットの再計算を行ってから付加します。
標準化への対応

前述の基礎情報だけでも難しそうで、「標準化への対応は敬遠したい。」と思った方がいるかと思います。
標準化のガイドラインを全て把握して、導入後のトラブル要因を事前に対策しながら、ユーザだけで標準化に対応する事は非常に困難です。
弊社ではお客様が標準化への対応をするための様々な製品とサポートメニューを取り揃えております。
INTEGRA9510バーコード検証機は、印刷された新バーコード自体の印字品質をグレード判定します。
ガイドラインでは読取り困難なバーコードが流通しないように、グレード“C”以上の印字品質で出荷するように定められています。
この検証機は、印字されたバーコードの“どこが”、“どのように”印字品質が悪いのかをメッセージで表示する事ができるので印字品質の改善も容易です。
その他にも、PTP、カートナーへのUVインクジェット印刷機やバーコードプリンタなどをラインナップしております。
サポートメニューとしては“新バーコード表示の基礎知識”、“医療機関での運用事例”、“トラブル事例”、“海外の機関動向”などの提供が可能
です。
今年4月から施行された「医薬品・医薬部外品製造業者等におけるコンピュータ化システム適正ガイドライン」のサポートや対応も可能となっております。
弊社では、この改定新基準の詳細についてお客様により詳しくご理解いただくために専門のスタッフを用意してお客様の疑問にお答えできる体制を整えております。
どうぞ、お気軽に弊社営業担当までお問合せください。