DPM(ダイレクトパーツマーキング)の読み取り

基板

Vol.206 flags 2022年7月号

 

 今回は、金属や基板の上に直接シンボルを印字するDPM(ダイレクトパーツマーキング)についてご紹介します。

DPMとは

 ダイレクトパーツマーキングは、金属や樹脂などにレーザーやドットピン、化学的なエッチングといった技術で直接バーコード、2次元コードを印字するものです。エンジン部品などの鋳物や、電子機器の基板表面、液晶のガラス面、医療用のステンレス製品など様々なものにマーキングされています。

 例えばエンジン部品を例にしますと、製造工程の中で、普通の紙のラベルにバーコードを印字して、エンジン部品につけても、耐久性は低いですから、すぐにオイルなどで汚れたりしてうまく読み取りできなくなります。その点、レーザーで表面の色を変色させてやれば、金属の対象素材そのものに変化を加えているわけですから、かなりの耐久性をもちます。もちろん、オイルが上から付着して見えなくなるくらい汚れれば、さすがに読み取りはできませんが、紙のラベルとは違ってきれいに拭けばまた読み取り可能になります。また工程が進むにつれ、表面処理を行っていく金属部品等はレーザーマーキングではうまく読み取れなくなってしまうことがあるので、ドットピンで強く彫り込むマーキングをするといった使い分けがなされます。

 高い耐久性をもつダイレクトパーツマーキングを使って、部品のトレーサビリティ、管理に活用される流れは、ますます拡大していくことでしょう。 マーキングされるシンボルはエラー訂正機能をもったDataMatrixやQRコードといった2次元コードが多く使われます。 DPMと紙のラベルの特性の違いは、次のようなものがあります。

各種DPMサンプル

DPMと紙のラベルの特性の違い

●シンボルの印字サイズ

基板などの上にはスペースがないため、極小サイズになることがよくあり、当然、読み取りにくくなります。

●印字コントラスト

紙ラベルは白地に黒印刷がほとんどでコントラストが大きいですが、DPMの場合、ガラスや樹脂を焼く・打刻するといった処理なのでほとんど印字色がつかず、コントラストが低くなります。

●光の反射

スキャナの照明が素材によっては反射してハレーションを起こし、真っ白になってしまいます。

●印字品質のバラつき

素材のバラつきやピン(針)の摩耗などで刻印そのものにバラつきが生じます。紙に比べてこうした歪みや崩れが生じやすく、読み取りが難しいものとなります。

 なかなかマーキングすること自体が紙のラベルに比べてはるかに難しいものが多く、先にちょっとした下処理をしてからDPMのマーキングを行うことが一般的です。

 例えば、ザラついていたり、金属光沢素材が対象物であれば、サンドブラストや薬品、レーザー等で平面を加工しておいて、その上にマーキングを行います。鋳物であればマーキングしたい部分の凸凹した表面をならして、平らにしてからレーザーで黒くマーキングしてやるといった具合です。また予めマーキングしたい所の表面に塗装しておいたり、金属蒸着などしておき、それをレーザーなどで飛ばしてその下の地色とのコントラストが出るようにする処理もされることがあります。例えば透明なガラスの上にフィルムを蒸着し、それにレーザーでシンボルをマーキングするとコントラストのあるマーキングとなります。これらの下地の処理である程度、読み取りがしやすいように改善できます。


リーダーの紹介

  当社のバーコードリーダーはDPMを得意とするものが多いですが、特にDPMに効果的な機能を紹介します。

小型2次元コード固定式スキャナ MCR-F180シリーズ

小型2次元コード固定式スキャナMCR-F180

正確な読み取りを実現する2種類の
照明機能を搭載しています。

読み取り対象物によって、白色の
落射照明か、赤色の斜め照明を使
い分けることが可能です。
また撮像も120万画素CMOSを
搭載し、高速CPUとあわせ、高速・高
精度な読み取りを実現しています。

 DPMの読み取り対象によって適した照明は違ってきます。もちろん内蔵照明で不十分なら外部照明を使用して読み取りを実現しますが、MCR-F180はあらかじめ2種類の照明が内蔵されていますので、内蔵照明だけで多くのケースでのDPM読取が可能になります。

高性能DPM対応2次元コードハンドスキャナ MCR-H700/710/720

DPMの読み取りを追求した極小&難読マーキングに強いモデルです。作業者が極小なマーキングを目視で狙えるワイドビューウインドウを装備しています。

金属部品や金属製医療器具、基板、鏡面・ガラス面といったものにダイレクトマーキングされた難しいシンボルの読み取りを可能にしています。リーダーの陰に隠れて狙いにくかった小さなシンボルも読み取り窓からのぞきながら狙うことができます。 また超極小マーキングに特化した「M C R – H 7 2 0」は最小分解能0.04mmと、いったいどれがシンボルなのか肉眼ではわからないような極小のシンボル、例えば液晶パネルのガラス面にマーキングされた極小シンボルといったかなり難しい読み取りを可能にします。

おわりに

DPM(ダイレクトパーツマーキング)が使われ始めてだいぶ時間がたちますが、様々な事例、ノウハウが蓄積されてきております。読み取り案件もなかなか難しい要求をいただくことが多いのですが、読み取りのためのセンサーである撮像素子や処理を行うCPU部も高性能化が進んでおり、ノウハウの蓄積と相まって読み取り能力もかなり高くなってきております。

初めにチューニング・設定を行う必要がありますが、それもかなり簡単・スムーズ・短時間に行えるようになってきております。皆様の職場等で『この部品にバーコードがつけられたらいいのに』と思われたことはないでしょうか? 何かバーコードでお困り事がありましたら、是非、当社までお気軽にご相談ください。経験豊富な営業マンが、丁寧にご対応させていただきます。