流通商品コードの現在

VOL.030 flags 2007年10月号

1978年にわが国でJANコードが制定されてから約30年になります。 現在、流通商品コードでは商品コードの他に製造日・賞味期限等の商品属性情報を付加した新しいコードが登場し、大きな広がりを見せています。 今回は最新情報も加え、流通商品コードの現在の状況についてお話ししたいと思います。

これまでの流通商品コードの超主流”JANコード”と”ITFコード”

現在、日本で最も多く利用されている流通商品コードはJANコード(Japanese Article Number)です。 これは世界100カ国以上で利用されている国際規格「EAN(Europe Article Number)コード」の中で国を表す部分を「45」または「49」としたもので、 EANコード、アメリカ/カナダのUPC(Universal Product Code)と互換性を持っています。 したがって相手国で使用している流通商品コードを取得しなくても、JANコードが付いていれば輸出が可能になっています。

現在使われているJANコードは、財団法人流通システム開発センターが一元的に管理しており、11万社を超える企業が生産する多くの消費財に割り振られているほか、 インターネットによる音楽配信、電力やガスなどの公共料金の請求書など、有形無形問わず多くの商品に利用されています。

また、物流用としてJANコードから作られたものに「集合包装用コード」あるいは「ITFコード(Interleaved Two of Five)と呼ばれるものがあります。 これはJANコードの前に1桁の物流識別コードを付加したコードで、主に段ボール箱などで集合包装された商品を識別するために利用されています。

しかし、形状が集合包装単位であっても、消費者が購入する単位である場合(商品を包装箱のまま、まとめ買いする場合など)は、 ITFコードとは別にJANコードを表示する必要があり、この場合は集合包装されている商品単品を識別するものとは異なるJANコードを設定することになっています。

JANコード、GS1-128、GS1-Databarのデータ構造

進化し始めた現在の流通商品コード

最近、JAN/EANコード、UPC、ITFコードを総称して『GTIN(Global Trade Item Number)』と呼ばれることが増えています。

GTINは2005年1月に国際商品コードとして国際流通標準化機関GS1が定めた流通商品コードですが、現在使用されているUPCコードやJAN/EANコードに代わる、 まったく新しい流通商品コードというわけではありません。

GTINとして使用する場合は各々のコードの頭にゼロを付加し、14桁に統一して使用します(ITFコードはそのまま14桁で使用します)。 そのため、現在、印刷表示しているシンボルを変更する必要はなく、UPC、JAN/EANコード、ITFコードは従来と同様に引き続き利用することができます。

JANコードやITFコードは、「商品そのもの」を示すバーコードなので、製造年月日、賞味期限、梱包番号、発注番号などのデータは表現できません。 そこでGS1は商品情報とあわせて物流情報や商取引情報を表示できる「GS1-128(旧称UCC/EAN-128)を開発しました。

GS1-128では様々な情報を表すためにアプリケーション識別子(略称AI)と呼ばれる識別コードを使用しており、 これは、様々なデータの先頭に付加してそのデータが何の情報であるかを識別するものです。 AIは定義が規格化されているので、製造・流通業界で情報交換を行うことが容易となっており、 日本ではコンビニエンスストアの料金代理収納システムにGS1-128が利用されています。
 

これからの流通商品コード

医薬品業界では08年9月から医療事故防止や患者の安全性確保を目的として、生物由来製品を中心に元梱包単位(段ボール箱等)にGS1-128が、調剤包装単位(単品)および販売単位(中箱)にGS1-DataBarが使用されることになりました。

GS1-DataBar(旧称RSSコード)はGS1が開発した標準バーコードの中で最も新しい流通商品コードで、3系統・7種類あり、JANコードと比較して同じ量のデータをより小さいスペースで表現することができます。さらに、GS1-DataBarの一部にはGS1-128と 同様にアプリケーション識別子を用いて明細情報データを表現できるものもあり、次世代の流通商品コードとして注目を浴びています。

また、2010年1月からはGS1-DataBarのうち、全方向スキャナでの読み取りができる種類のものが、一般消費財に使用される世界標準のバーコードとなります。

しかし、GS1-DataBarはJANコードに代わるものではなく、流通商品コードの選択肢として加わるものであり、2010年以降もJANコードは使用可能です。 GS1-DataBarはJANコードとは構造の違うバーコードなので、利用するためにはGS1-DataBarの読み取りに対応するスキャナなど、機器の準備が必要になります。

新たな投資が必要となることで採用に躊躇するという想像もできますが、従来の流通商品コードではできなかった重量や製造年月日などの表示、 情報の増加に伴う高度な商品管理を可能にするなど、GS1-DataBarを使うことで得られる多大なメリットは決して見過ごすことはできません。

わが国でJANコードが制定されてから約30年、流通商品コードの世界は新たな転機を迎えようとしているのです。