トップ > 自動認識トレンド情報 > UHF ICタグのメモリとデータ(中編)
自動認識トレンド情報
技術情報誌 Flags

MONTHLY MARS TOHKEN SOLUTION NEWSLETTER
『UHF ICタグのメモリとデータ(中編)』
Vol.177
先月(flags vol.176「UHF ICタグのメモリとデータ(前編)」)に引き続いてUHF帯ICタグのメモリとデータについてご説明いたします。
近年、多くの現場で使用が広がってきており、メモリの各種仕様を知ればより適切な活用が期待できます。
メモリ構造
前号でも掲載しましたが図1にメモリ構造を示します。
*BANK 10 [TID]
TIDメモリはほとんどが書き換えできないメモリから構成されており、どういったチップであるかを表すモデルNOコードやチップメーカー独自のシリアル番号などが格納されています。一部のタグでは、独自の拡張機能の設定情報のメモリが存在することもあります。ICタグは外からではどこのどういうチップが使われているかわからないですが、ICチップのモデルNOを読み取ることでどこのどういうチップかを確認できます。
たとえばTIDバンクの初めの32bitがE2801170(16進数)であればImpinj社のMonza R6-Pです。またTIDに含まれているシリアル番号等の値は、ICタグの初期出荷時のEPCバンクのEPC生成によくつかわれています(詳細はICチップ毎に異なりますので各ICチップの仕様書を参照してください)。
*BANK11 [USER]
USERメモリは、基本的に自由に読み書きできるメモリです。ICチップにより、搭載されているものと、搭載されていないものがあります。量もさまざまで32bit(4Byte)程度から2Kbit(256Byte)といったものまで様々ですが、UHF帯RFIDにおいてはEPCのみで処理されることが多く、USERメモリは小さく、あるいはまったく搭載されないものが増えています。このあたりの考え方、使い方もHF帯とは違うところです。
EPCのエンコード
MIFAREやICODE SLXといったHF帯のICタグのチップの場合、製造している工場であらかじめユニークなIDコードが書き込まれてしかも書き換え不可な状態にされて、ユーザの手元に届きますので、どういったデータであれば重複しないかといったことをユーザが考えることはありませんでした。しかしUHF帯のICタグの検知は通常、”Inventory”という命令でおこなわれ、検知されてリーダライタからホスト側に送信されてくるデータはユーザが書き換え可能なEPCに書かれた「ユニーク識別コード」です。ですのでEPCにICタグを識別するための重複していない「ユニーク識別コード」を、ユーザ側で書き込みして重複しないようにしてから、運用を始める必要があります。もし2枚のICタグに同じ「ユニーク識別コード」が書き込まれていた場合、ICタグの検知を実行してもデータは1種しかホスト側には送信されず、2枚あっても、1枚しか存在しないように見えてしまいます。
ユニーク識別コードとしてよく使われるのは「ISO/IEC 国際規格」方式(以下ISO方式)と、「GS1 EPC/RFID 標準」方式(以下EPC方式)です。これら以外では、利用者が自分で独自にきめた独自コードも使われています。ただ独自コードの場合、世界中で独自コードが多く使われてしまうと、各々の独自コード内ではユニークな重複なしであっても、異なる独自コードをまたがったとき、どこかで重複が発生してしまう可能性があります。
さてISO方式とEPC方式の場合、どちらも基本的な考え方は同じです。以下のような構造になっています。
BANK01【EPC】
ISO方式の場合、企業コードとしてはGS1の企業コード以外に帝国データバンクの企業コードや アメリカのDun&Bradstreetの企業コード、また国税庁の法人番号など様々な機関の番号を使用することができます。上図では省略しましたが、どの企業コードを使ったかということを示す発番機関コードも入れることになっています。EPC方式の場合、企業コードはGS1に登録されているコードが当然使われます。こういった重複のない企業コード体系と各企業が管理する品目コードを使うことで同じものがないユニークな識別コードになるよう工夫されています。
EPC方式のエンコード
EPC方式には用途別にいくつかのエンコードフォーマットが定義されています。代表的なものを以下に示します。
EPC方式のエンコードフォーマットバイナリですが概略としては下記のような3つの部分から構成されています。
初めのEPCヘッダの8bitはどのエンコードなのかを示します。例えば30(16進数)であればSGTIN-96ですし、37(16進数)であればGRAI-170です。フィルタ値は読み取り対象とするかどうかをその名の通りフィルタする際に使用するもので、エンコード種類によって意味合いは異なります。例えばSGTINにおいてフィルタ値が1であればそのICタグがついた物は普通のPOSレジで精算する商品であることを示します。フィルタに続くバイナリ部分には企業コードや商品コード、シリアル番号などが入ります。SGTINはスーパーやコンビニで販売されている商品に大抵ついているJANコードにシリアル番号を振って1個1個、重複のないコードにしたものです。ですので、逆にSGTINからJANコードに戻すことができます。POSレジでの会計にも使用しやすいフォーマットといえるでしょう。詳しくは次号で説明いたします。
おわりに
今月も紙面が尽きてしまいました。だいぶ駆け足でしたがEPCバンクのユニーク識別コードの概要などについてお話をさせていただきました。次号ではデータエンコードについてもうすこし詳しくご紹介させていただきます。
技術情報誌 Flags(PDFデータ) | ![]() |
---|

UHF帯RFID関連技術トレンド情報
- vol.189「はじめてのRFID導入(1)」
- vol.187「便利機能で応用無限大 ~こんな機能まであるUHF帯リーダライタ~」
- vol.186「UHF帯リーダライタの活用で 日常の業務のDX推進」
- vol.184「モノの管理を自動化 ~文書・資産貸出管理~」
- vol.183「いったい、どこにあるの?~RFIDを活用した所在管理~」
- vol.182「ヘルスケア分野の自動認識 ~RFID編~」
- vol.178「UHF ICタグのメモリとデータ(後編)」
- vol.177「UHF ICタグのメモリとデータ(中編)」
- vol.176「UHF ICタグのメモリとデータ(前編)」
- vol.173「自動認識総合展2019出展レポート」
- vol.168「自動認識の動向(前編)」
- vol.165「RFIDリーダもPLCリンクで簡単活用」
- vol.164「UHFだけじゃない!HF帯RFID機器(後編) 」
- vol.163「UHFだけじゃない!HF帯RFID機器(前編) 」
- vol.158「えっ!いまさら?自動認識への切換えが進む『物品管理、文書管理』 」
- vol.155「自律駆動型UHF帯RFIDの活用事例」
- vol.154「UHF帯RFIDの一括読取りの実力の程は?」
- vol.150「自律型UHF帯RFID固定式リーダライタのすすめ(前編)~機器選定のポイント~」
- vol.146「拡大一途!UHF帯RFID活用事例のご紹介」
- vol.144「製造現場でのUHF帯RFIDの活用法」
- vol.131「広がるUHF帯RFIDの活用事例」
- vol.101「長距離通信R F I Dを活用した『不適切駐輪管理システム』導入事例 ~国立大学法人 筑波大学様~」
- Vol.93「『新周波数帯移行開始で広がる『UHF帯RFIDの活用ソリューション』 」
- vol.86「『RFIDを活用した「トラック入出場管理システム」導入事例』」
- Vol.79「『電波帯移行で揺れる、UHF帯RFIDの最新動向』(後編)」
- Vol.78「『電波帯移行で揺れる、UHF帯RFIDの最新動向』(前編)」
- Vol.70「期待されるUHFの現状」
- vol.08「RFIDを取り巻く現状」
UHF帯RFID関連技術ガイド
関連製品
自律駆動型固定式UHF帯RFIDリーダライタ 「FRU-4100Plus/FRU-4025Plus」
FRU-4100Plus/FRU-4025Plusは簡単設定の自律駆動型UHF帯RFID固定式リーダライタです。
上位システム開発負担を軽減!
・マニュアルモードと、4つのオートモード搭載
・PLCリンク機能がオートモードに追加! ラダーなしでメモリにICタグデータが上がります(FRU-4025Plus/FRU-4100Plus共通)
・オートモードでは制御パソコン不要! 電源ONで自動的にICタグを読み取って上位にデータを送信
・オートモードの各種設定はブラウザから簡単設定
●LAN接続(Socket通信、HTTP/HTTPS通信)をサポート
●外部インターフェース(LAN/DIO)
●電源 DC12~24V対応
●小型、省スペース
●日本製。日本語マニュアル、日本語資料でわかりやすい
●電文フォーマットや、マニュアルモードコマンド資料等は↓のダウンロードより公開
UHF帯RFIDタグ
長距離通信が可能なUHF帯対応ICタグを各種取り揃え、物流資材、固定資産用など対象物に応じて最適なものをご提案さしあげます。
●用途例
○耐熱対応
○カゴ車
○ドラム缶
○金属パレット
○ラック
○PC
○什器
○サーバ
○金型
○工具 etc...)
詳しくはお問い合わせください。
技術情報誌 Flags
2021年
2020年
-
Vol.187
便利機能で応用無限大 ~こんな機能まであるUHF帯リーダライタ~ -
Vol.186
UHF帯リーダライタの活用で 日常の業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進 -
Vol.185
健康診断のIT化 ~どこでも問診~ -
Vol.184
モノの管理を自動化 ~文書・資産貸出管理~ -
Vol.183
いったい、どこにあるの?~RFIDを活用した所在管理~ -
Vol.182
ヘルスケア分野の自動認識 ~RFID編~ -
Vol.181
ヘルスケア分野の自動認識 ~バーコードスキャナ編~ -
Vol.180
良い製品は良い道具から ~DPM&ESD対応機器~ -
Vol.179
応用無限大!新時代固定式コードリーダの活用法 -
Vol.178
UHF ICタグのメモリとデータ(後編) -
Vol.177
UHF ICタグのメモリとデータ(中編) -
Vol.176
UHF ICタグのメモリとデータ(前編)