『医療用医薬品への可変情報表示検討セミナー』講演内容のご紹介(後編)

Vol.096 flags 2013年5月号

 厚生労働省による昨年の新バーコード表示の改正通知を受けて、弊社では今年の3月に「医療用医薬品への可変情報表示検討セミナー」を開催し、多数のお客様にご来社を賜り本セミナーの内容についての関心の高さを知りました。そこで、先月号より広く読者の皆様のためにもセミナーの内容を本紙面でお知らせをしております。
 今号は、当日弊社へお招きし特別講演を賜りました芳賀赤十字病院薬剤部中里先生のお話の後編を中心に引き続きセミナー内容を紹介いたします。

第3 部 新バーコードの注射薬での運用とPTPにおけるバーコード表示の活用(後編)

(特別講演:芳賀赤十字病院薬剤部 中里先生)

 前号では新バーコード表示を実際の医療現場の視点から、ヒューマンエラー防止や正確性、省力化、効率性についての実際の活用効果と医療安全対策での期待効果に加えて、薬品管理や注射セット監査でのバーコードの活用事例と効果について中里先生による医療現場での新バーコードの活用事例と期待効果のお話を頂きました。
 今号では引き続き医療現場での新バーコードの活用事例と期待効果を紹介します。

◎混注時監査での利用

薬剤師による注射混合

 薬剤同士を混ぜ合わせる混注作業において混ぜる薬品の種類や容量を間違えてしまうと患者に投与する前にそのミスを発見することは非常に困難です。どんなベテランでも目視でのチェック作業では必ずヒューマンエラーが発生します。さらに事故が発生した場合にはチェックした記録は残っていても、目視チェックの結果では信憑性が問われる事となります。

 

投与時の3点チェック

そこで、混注時に注射箋の情報を読み取り、混注する薬品一つ一つに表示されたGS1バーコードを読み取らせる事により、注射箋に指示された以外の薬品は機械的にエラー表示され、だれでも間違えのない作業の仕組みが構築されました。

 さらに、患者投与時には、(1)“だれが(看護師)”、(2)“だれに(患者)”、(3)“何を(薬品)” の3点チェックを看護師の目視チェックではなく、患者のリストバンドに表示されたバーコードと現品に表示されたGS1バーコードを読ませる事により、誤投与や患者取違い防止にも活用しています。

◎読み取れないバーコード

 バーコードを活用して監査業務を始めてみると、一部の薬品に表示されたバーコードが読み取れないという現象が発生しました。
 そこで、読み取れなかったり、読み取りづらい薬品の状態を調べてみると、バック製剤で問題が多い事が判ってきました。

読み取れないバーコード(例)

その主な原因は、下地の色が透明であったり、折れ曲がった位置に表示されていました。その他にも、印字品質が悪かったり、バーコードを赤色で印刷したり、バーコードの余白が全く無かったりする例も見つかりました。

 このようにバーコードが読めなかったりすると、再度目視で確認する事となり作業負担が増えるため現場ではいつの間にか全てが目視確認に流れてしまいます。これでは逆効果で、バーコードの信頼を損ねることにもなるので、バーコード表示に関してはメーカー側での確認を強く求められました。バーコードの表示自体が無い場合は安心・安全性が維持できない目視確認の問題が発生するので、バーコード表示の対応を薬品・薬剤メーカーにも強く求められています。

改善されたバーコード表示
◎PTP バーコードの活用と表示方法の提案

<バーコードの表示実施>
 厚生労働省医政局経済課と医薬食品局安全対策課より、昨年6月29日付で「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項の一部改正」が通知されました。
 取り違え事故防止や市販後の追跡可能性を確保する観点で内用薬と外用薬について、生物由来製品以外であっても原則2015年7月までに調剤包装単位で新バーコードを表示することや、流通効率化のために販売包装単位と元梱包装単位について、任意項目についても可能な限り表示していく規定が盛り込まれた事により、PTP薬品でのバーコードの活用が容易になってきました。

<ピッキング時の利用>

ピッキング時の利用

 ハンディターミナルでPTPに表示されているバーコードを読み取り、ピッキングミスを防止します。
 PTPにバーコード表示が無い薬品は、薬品棚にバーコードを貼っておく事で運用可能としています。

<調剤監査時の利用>

調剤監査時の利用

 取り揃えられた薬品の監査とともに、薬品の入れ間違いを防ぐため、薬品と薬袋のバーコード照合行います。

<患者の利用>

<患者の利用>

 薬局で正確な調剤が行われても、患者自身が誤った服用してしまっては意味がありません。今後の課題であり期待でもありますが、患者が薬品を服用する時に調剤単位のバーコードを利用するシステムができれば、服用チェックが行えると共に、服用時間帯などの記録が残せるので、より有効な治療に利用可能となります。

◎まとめ

 厚生労働省はバーコードシステムの普及・実用化へ向け、医療機関へのバーコードチェックの利用について理解、協力を要請しています。しかしながら医療機関での新バーコードの利用は現状殆ど進捗がなく、今後医療用医薬品のバーコード利用環境が整備されると、バーコードを利用せずに医薬品の事故を起こした場合は、医療機関の過失が問われる場合があります。
 バーコード関連企業においては「医療用医薬品のバーコード表示の実施要項」の基準以上の製品作りと技術の向上をめざす取り組みを希望いたします。
以上、中里先生の講話を頂きました。

 弊社は自動認識システム総合メーカーとして、製薬から医療機関までのトータルで提案できるラインナップと技術情報を発信して、少しでも多くの医療機関で医療過誤に役立てるソリューションを提供したいと思います。