納入メーカーから要求強まる生産現場の静電気(ESD)対策

VOL.080 flags 2012年1月号

新年あけましておめでとうございます。昨年は世界中で災害に見舞われ大変多くの犠牲者が出ました。犠牲者の方々には心よりお悔やみ申し上げます。また、チュニジアでの暴動によるジャスミン革命から始まった前例のない大規模反政府デモや抗議活動を主とした民主化運動は『アラブの春』と名を変えてアラブ周辺国から世界に波及していきました。経済では過去最大の記録的円高更新に加え、ギリシャを発端にEU諸国の経済不安で3年前のリーマンショックを超える大不況に怯える一年でもありました。 今月号は昨年を振り返ると共に、今年注目のESD対策についてご紹介します。

要求強まるESD対策

冬になると身近に起こる“ビビッ!”と感じるあの誰でも嫌いな静電気。この静電気が電子デバイスにも大きな影響を与えています。もはや走る電子デバイスと言われる自動車に代表される安全第一であるべき製品の故障原因や、大きな事故を引き起こす要因とまで言われています。

 静電気による電子デバイスの障害は、いつ発生したのかが解明しづらく、完成品に組み込まれ障害が発生した場合には、障害の原因究明が殆ど不可能なのが現状です。電子デバイスの高密度化、集積化に伴う製造現場でも、静電気の帯電レベルの制御が重要な課題となっており、対策強化が急がれています。
そこで完成品(納入)メーカーから徹底したESD対策が電子デバイスベンダーにも強く求められてくるようになったのです。

現場で発生する静電気の背景

静電気発生原因は人です。現場で作業する人が動くたびに微量な電気を帯びていきます。さらに湿度が人体の帯電に大きな影響をもたらしています。
例えば、カーペットの上を歩行した場合の帯電は、湿度が 65~90% 以上の場合で 1,500V、湿度が 10~20% の場合で 35,000V に達するとも言われています。 

 こうして動き回った人の指先から静電気が発生した場合でも、帯電が 1kV の場合には放電を知覚せず、 2kV でも痛みとしては感じないとも言われており、人が激しい放電の発生を知覚していないとしても問題となるレベルの静電気が発生していないと判断を下すことはできません。

  静電気のエネルギーがたとえ微量でも、電子回路の誤動作や半導体素子に損傷を与えるには充分な電流となるため、あらゆる電子機器には充分な耐性を持たす必要があるのです。

静電気対策の背景

静電気による損傷を受けやすい電子部品は静電気敏感性デバイス (electrostatic sensitive device) や静電気放電敏感性デバイス (electrostatic discharge sensitive device) などと呼ばれ、静電気によるわずかな影響も受けない様に、特別な注意を払って取り扱うことが要求されています。

作業現場では、静電気管理領域を設け許容できる帯電のレベルや各社の管理の方針などによって異なりますが、床、作業台、椅子、工具などは静電気対策用のものとし、湿度の管理はイオナイザの使用によって帯電のレベルを制御し、また作業者は専用の衣服や履物、そしてリスト・ストラップを着用するのが一般的でした。

  最近では、各社の品質レベルの向上に合わせて、静電気管理領域で使用される電卓やペンなどの文房具や手順書などのほか、製品に一番近づくバーコードスキャナに対しても静電気対策を施すべきという方針が徹底されつつあります。こうした厳しい納入先からの要求に、完全な静電対策は無理と諦めてしまう現場が多く見受けられています。

新技術によるESD対策スキャナ

多くの静電気対策いわゆるESD対策製品は、通電性の高いカーボンを成型時に加えることによって帯電防止対策を取っています。 しかし、この方法をバーコードスキャナに取り入れますと構造の複雑さから基本素材のABSと均一にまざった状態で成型することは難しく、製品全体で均一の表面抵抗値を出すことができませんでした。その上、製品の特性上、机などの固形物との衝撃は避けられず、比較的に弱い衝撃にでもカーボン脱着が見られていました。

 こうした過去の実体験から、MTSはいち早くカーボンフリー、低イオンコンタミネーションと低アウトガスを実現した素材を取り入れた新技術によるESD対策スキャナを発売しました。MTSでは、ESD対策スキャナは勿論、電卓、マウス、ペン、クリアパウチなど、携帯品に対してのESD対策をトータルでご提案致しますので、お気軽にご相談下さい。

ESD対策対応機器紹介動画


ESD対応 2次元コードハンドスキャナ

当社は長年にわたり静電気対策モデルの研究開発に取り組んでいる数少ないメーカーです。
液晶デバイスを始め、電子部品を製造している現場ではESDによるマイコンの破壊や劣化対策は必須事項となっており完成品メーカーからも信頼性評価の重要項目として注目されております。
当社のE S D 対策スキャナは、新技術を取り入れたカーボンフリー、低イオンコンタミネーション及び低アウトガスを実現した素材を使用しております。