身近なところから手軽に改善!小さなバーコードシステム(前編)

VOL.038 2008年6月号

 これまでに何度もご紹介を重ねてきたトレーサビリティ。テレビのCMでも使われるようになり、一般社会への認知度もさらに高くなってきました。 しかし話が大きすぎて敷居が高く感じられるのもまた事実。そこで今回は「身近」「手軽」をキーワードに、 少しのコストで改善を実現する2次元コード/バーコードシステムをご紹介します。

バーコードシステムをもっと身近に

 本紙でも何度も取り上げてきたトレーサビリティシステムですが、資材調達から出荷までのトータル管理であるとか、 「一気通貫」といった企業全体をまとめて変えてしまうような大きなスケールでの話になりがちでした。 確かにトレーサビリティの一番の強みは企業全体に渡ってモノと情報を常に紐付けして管理できるところにあります。 ただそのためには非常に長い打ち合わせや事前の準備、そして決して少なくない費用が必要です。 仕事の進め方も程度の差はあれ変わるはずです。現場で作業をされている方にしてみれば「会社がやっていることだから…」 と曖昧な納得の仕方で新しい手順に変えることもあると思います。

バーコードはそんなに大きな枠でしか使えないのか?もちろんそんなことはありません。 バーコードや2次元コードは情報を的確に管理する一方で、目の前の作業を簡単にして、効率よく進められるように改善できるツールなのです。 もっと手軽に、もっと身近なところで作業を改善していただくためのヒントになるような、そんな事例をご紹介しましょう (いずれも実際に導入されたシステムです)。

バーコードを使って作業を改善した事例

PDA端末の液晶に表示された画面イメージ

(1)機械の稼働状況チェックシステム

最初にご紹介するシステムは、PDA端末 (TBR-6010)を 使用した、機械の稼動状況のチェックシステムです。 この工場では、作業者が各エリアに置いてある機械の状況を定期的に確認して、稼動状況をチェックするように定められています。 作業は機械の名称と台帳を照合しながら、機械に表示された稼働状況を表す数値を台帳に記入するという方法で行われていました。 ところが現場にはかなりの数の機械があり、名称も似通ったものばかり。そのため台帳への転記ミスも多く、何度も確認したり、 やり直したりと非常に時間の掛かる作業でした。

そこでこの現場では、機械の名称と型式をバーコード化して機械に貼り付けました。 それまで機械の名称や型式を読み取っていた作業者は機械に貼られたバーコードをPDA端末で読み取るだけで済むようになり、 台帳から当該の機械を探す必要がなくなりました。 バーコードを読取った後は、PDA端末に数値を入力して作業は完了。目視確認、照合という手間が省けた上にこの作業では全てをPDA端末で行いますので ペーパーレス化も実現できました。

内容は極めて単純なのですが、機械の名称をバーコードにするだけでもこれだけの改善ができるのです。

(2)固定資産棚卸システム

次にご紹介するのは、棚卸(固定資産)の事例です。

棚卸の作業はどの企業にとっても避けては通れない作業です。 年に数回、多くの人員と時間を使って台帳を片手に現場のあちらこちらを動き回るといった状況が、日本の多くの企業で繰り返されています。

棚卸しの作業をもっと効率化できないか。実はバーコードを使って簡単にできるのです。ある現場での例を挙げますと、 この現場ではバーコードシステムを導入するまで、人海戦術で固定資産の台帳と物品に貼り付けられた固定資産の管理番号を目視で照合していました。 確認対象物が多いことや確認違いや記入ミスが起きることもあり、棚卸しを完了させるための労力は相当の大変さがありました。

そこでこの現場では固定資産番号をバーコード化。作業者は固定資産に貼られたバーコードをPDA端末で次々と読み取っていきます。 読み取ったデータは無線通信でマスターデータの入ったパソコンに転送され、その場で消し込みが行われていきます。 リアルタイムで消し込み作業が進むため、確認が取れていない固定資産もパソコンで直ぐに確認でき、結果作業漏れもありません。

それまで一日がかりだった作業が、バーコードを貼ることと数台のPDA端末を導入するだけで午前中の2時間ほどで片付くように改善されました。

この現場では固定資産の棚卸し改善にバーコードを使いましたが、同じ仕組みで毎月末に行うような 製品の棚卸しなどで使用している会社もあります。

棚卸システムでの液晶画面イメージ
簡単システムの導入コスト