読ませる? 読み取る? 身近にある2次元コード

スマートフォンとQR

VOL.037 2008年5月号

 静脈を読み取る銀行ATMの「手のひら認証」や指紋を読むことでロックを解除するパソコンのセキュリティ管理、「suica」「PASMO」といったICタグと同じような仕組みのものなど、人が介在しないで認識をするシステムは生活のなかにどんどんと入り込んでいます。 今回はより生活に近いところで使われている2次元コードに注目して、その仕組みを解説します。

生活密着型の2次元コードには2つのパターンが


携帯画面QRコード読み取り対応卓上2次元コードスキャナ

日常に溶け込んでいる2次元コードは大きく2つに分類できます。 2次元コードを「読み取る」のか「読み取らせる」のかが分かれ目になります。

割合から言うと街の中で使われている2次元コードは「読み取る」ものが圧倒的に多くなっています。 雑誌や広告、企業のWEBサイトや駅貼りのポスターなど、さまざまな場所や印刷物に2次元コードが表示されています。 必要に応じて携帯で2次元コードを読み取って情報を利用する。そんな使われ方はすっかり定着した感じがします。



普段、便利に使っている2次元コードですが、高校生などに聞くと携帯サイトへのアクセスのために作られたものだと勘違いされていたりします。 確かに広告媒体などでは携帯サイトのURLを2次元コード(QRコード)化したものがほとんどで、このような勘違いをされても仕方がないという感じもするほどです。

2次元コードの特長の一つは大量の情報を小さなコードにすることにありますが、携帯サイトのURLの情報量は、さほど大きくありません。 それでもURLを2次元コード化するのは、「http://www………」のような面倒なアルファベットの入力を省くことと、簡単かつ正確に読み取り、 確実にWEBサイトに誘導することが目的なのです。

有料でしかもスペースに制限のある印刷物では十分なPRができないとき、 いまいちばん多く使われるのは携帯電話やPCなどのWEBサイトです。 情報量は多く、ビジュアル的にも優れ、音声や動画まで使えるWEBサイトは広告媒体としては実に有用なのです。

しかし、WEBサイトは印刷物と違って無意識に目に入るというものではありません。 ユーザーが積極的に「見に行く」ことがなければ、どれだけ豊富な情報も伝わらないという弱点があります。 そこで印刷物からスムーズに(しかも簡単に)WEBサイトに誘導するために2次元コードを利用するのです。

2次元コードは双方にメリットをもたらす

携帯電話に表示したQRコード読み取り装置

 URLを2次元コードにするのは、現時点では最も効率の良い方法であることは間違いありませんが、 2次元コードの強みの一つは情報容量の大きさにあるので、考えるとちょっともったいないような使い方であることは否めません。

では2次元コードを「読み取らせる」使い方はどうなのでしょうか。今度はそちらを見ていきましょう。

「読み取らせる」使い方は、「読み取る」使い方のまるっきり逆のやりかたになります。 「読み取る」使い方が印刷物などに表示された2次元コードを携帯で読み取るやり方だったのに対して、 「読み取らせる」使い方は今度は携帯に表示した2次元コードを読み取り用の端末に読み取らせてサービスを受けるのです。

 昨年後半から2次元コードリーダーが組み込まれたタッチパネル式のサービス端末が宅配業者の全国の営業所に置かれたり (最近はテレビCMで盛んに流されています)、飛行機のチェックインや搭乗手続きでも携帯に表示した2次元コードが使われるなど、 「読み取らせて」使うサービスも徐々に広がりを見せています。

このような使われ方では、あらかじめ利用者は名前や住所、飛行機なら予約といった情報をインターネットを経由して登録しておき、 登録された情報を引き出すための鍵(ID)として2次元コードが使われる形になります。

航空機の予約に絞って話をすすめましょう。 従来のやり方では電話や店頭の用紙を使って座席を予約し、担当者が手作業で入力していました。発券した後の搭乗手続きも基本的に目視の作業が多く、 場合によっては間違う可能性があります。

現在進んでいるホームページでの予約/チェックインサービスでは、チケットの購入・予約などは各航空会社のホームページで事前に済ませ、 予約完了後に送られてくる2次元コードや予約情報を携帯電話に保存することで、発券をしないまま飛行機に搭乗することができます (事前の予約情報と表示された2次元コードのIDを照合しています)。

このようなサービスは顧客の手続きを減らしたり簡単にしたりという利便性を提供する一方で、 航空会社にとってはリピート性を確保することや利用する季節・人数・行き先といったデータの収集といったメリットももたらします。 集められたデータは細かく分析され、マーケティングや新商品・新サービスといった次の展開に繋げられていくのです。