いよいよ始まる医療用医薬品のバーコード表示

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VOL.035 flags 2008年3月号

厚生労働省から通達されていた「医療用医薬品のバーコード表示」の施行が、いよいよ半年後の今年9月に迫ってきました。 これまでも業界動向や最新情報などを取り上げてまいりましたが、今号では導入を進める上での注意点、具体的な導入ノウハウを紹介します。

導入にあたっての二つの課題

間近に迫ってきた医療用医薬品のバーコード表示の標準化ですが、企業の動きも昨年の後半ぐらいから活発になっています。 しかし、導入を検討し始めたものの、「概要は理解しているが、どう具体化すれば良いかで悩んでいる」という企業も見受けられます。

医療用医薬品のバーコード表示の標準化では”GS1/GS1合成シンボル”での運用が決定し、 表示対象も1段階細い、「調剤単位」となることが決まっています。

調剤単位でのバーコード印字はこれまでに行われていなかったことなので、ラベルの素材や、 対象の材質や形状などの問題も含め、印字そのものが最初の「壁」になる可能性もあります。

たとえ印字できたとしても、流通の過程や薬局、医療機関などでも読み取られ、利用されることになるのですから、 いつもでもどこでも正確に読み取れることも重要なポイントになるのです。

GS1合成シンボル表示では2つの課題を解決することで、いくつかの重要ポイントをクリアすることができます。 その2つの課題とは、①GS1合成シンボルの規格の正しい理解とフォーマットの整合性、②GS1合成シンボルの印字品質、です。

GS1合成シンボルの規格を正しく理解する

今回の標準化で何より重要なのは、目的が医療事故の防止にあるという点です。 このシンボルを使うすべてのところで印字された内容に信頼が置かれ、医薬品が適切に投与・使用されるシステムにしなければならないのです。

そのためにはまず規格に正確に合致したGS1合成シンボルを作り、いつでもどこでも情報を正しく伝達する必要があります。

新しくコードが規格化されたとき、初期の段階でコードの構造そのものの理解が低かったり、 誤解をしていることで混乱が生じることがあります。

これまでのケースを紹介すると、GS1合成シンボルで可変情報(消費期限や製造年月日など) を続けてコード化する際、本来ならば区切りとなる「キャラクタ」を設定して、それぞれが別の情報であることを明示するのですが、 このキャラクタ設定を正しくコード化していない(あるいは入れていない)ために読み取り時にエラーになったケースがありました。

このような基本的な間違いを防止するためにはGS1合成シンボルについて正しい 知識を持つ以外にありません。 そのためには標準化にあたってのガイドブック(財団法人流通システム開発センター刊『医療用医薬品 RSS/RSS合成シンボル GS1-128バーコード運用ガイド』)を備え、各企業が共通した認識でGS1合成シンボルを作り、使っていくことが解決の第一歩であると考えます。

その上でなお、作ったGS1/GS1合成シンボルが規格フォーマットに合致しているかどうかを確認するために、ガイドラインに準拠して間違い箇所の有無などをチェックする「データフォーマットチェッカー」を導入する必要があるのです。

GS1合成シンボルの印字品質

データの構造を正しく理解し、コード化したら、次は正しく印字する番です。

今回の標準化では、「調剤単位」の小さなスペースへ印刷されたGS1合成シンボルの印字品質を「A~F」の5段階(Eは飛ばされています)に分類し、グレード「C」以上であることが求められています。規格に則ったGS1合成シンボルを正しく印字するための大前提として、適正な印字ソフトとプリンタを選ぶことは言うまでもありません。

次にそれぞれの材質にあったラベルやリボンなどのサプライ品を選ぶ必要があります。アルミ蒸着された面などに印字するためには、それにあったものを選ばなければなりませんし、裏面の形状の違いも印字品質に大きく影響します。また印字速度も問題です(早すぎれば印字精度が落ち、遅すぎれば製造効率が下がります)。

ボール紙などの色や材質によっても印字品質は変化しますから、バラツキなく、一定の品質でバーコードを印字するためには包装メーカーや印刷メーカーまで一体となってグレード「C」以上の品質確保のためにハード、ソフト、サプライ品を選んでいくことが重要です。

その上で、印字した品質を常にチェックするために、「検証機」を導入することが望ましいでしょう。

検証機には、製造工程でリアルタイムに全数検査を行う場合の「インライン検証機」と、抜き取り検査や卓上作業時用の「オフライン検証機」があります。

検証機での判定は安定した読み取りの裏付けになり、万が一、印字品質が不良判定が出た場合には、改善箇所を印刷機にフィードバックできる機能も備えています。

印字面の湾曲や凹凸、内容物注入による下地色の変化など、印字品質が大きく変化するようなところで検証機を選定するときには、そのような現場での運用ノウハウを持ったメーカーや検証機を選ぶことが成功への鍵となります

このような対策を講じた上で、最後はヒューマンエラーの防止に、生産開始時や抜き取りで検査をする場合には高いハンディターミナルなどで実製品とRSS合成シンボルの照合を行い、全数検査では固定式の高速2次元コードリーダを設置してインラインで照合します。

さらに、表示されている文字とGS1合成シンボルの内容を照合するには、文字照合機と2次元コードリーダを組み合わせることで、「文字」・「バーコード」・「実製品」の完全な照合が可能になります。

検証機では読み取ったGS1合成シンボルの各部分についての品質グレードをグラフ化(上左)し、実際のシンボル画像でそれぞれの箇所のグレードを色分けして修正すべき箇所を判りやすく画像(上右)で表示します。