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『製造現場とミクロの世界 ~X線を利用した品質管理』

Vol.34

これまで、この”Flags”では、自動認識を利用した『目に見える部分』での効率や品質の仕組みなどをご紹介してきました。ところが実際の製造現場にはもうひとつ、肉眼で見えないレベルで製品開発や品質を支える、非常に高度な世界があります。 今号では日新月歩で進化する電子機器を支えるミクロの世界をご紹介します。

世界はコンピュータで制御されている


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今や身の回りのあらゆる品物で電子化が進んでいます。家電品のすべてがコンピュータで制御されていると言っても 決して大袈裟ではなくなっています。

コンピュータによる制御は車や航空機のようなものにも波及し、利便性はもちろんのこと、 人の判断や技量で安全性が左右される事がないように、電子制御による自動化がどんどん進んでいます。

電子化は私たちの社会を便利に、豊かにしてきました。その背景にはメーカー各社が開発に力を注ぎ、 いくつもの障壁を乗り越えてきた時間と労力があります。中でも小型化・多機能化は、さまざまな製品に共通して求められた課題でした。 この課題をクリアするために、どうしても必要だったのが高性能で超小型の電子部品の開発でした。

「内部統制」を一言でまとめてしまうと、「違法行為・不正な取引を防止し、財務報告の信頼性を高める仕組み」とでも言えるでしょうか。 要するに「上場企業は不正を行う隙間などどこにもない、適正で厳密な仕組み・手続きにしなさい」ということです。 当然のことながらこの仕組みや手続きには客観的な監査がなされ、証明されることになります。つまり内部統制は財務関係だけに止まらず、 企業の内部にあるすべての業務に及ぶというということなのです。

高性能化・超小型化という課題を解決したことが、コンピュータ社会・IT社会と呼ばれる現代社会を作ったと言っても過言ではありません。 その恩恵を私たちは受け、いまや電子機器抜きには社会生活が成り立たないほど、小型になった電子機器に依存している状態にもなっています。

小型化・高性能化の裏側で


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ここ20年近くの間でサイズが小さくなったものの代表と言えば、カメラと電話、それにミュージックプレーヤーでしょうか。 どれも、もともとは「アナログ」だったものが「デジタル」に変わって、劇的に小さくなったものです。

最初にNTTから発売された携帯電話は、ショルダーバッグのような大きさで、およそ携帯とは呼べないほど重いものでした。 それがいまやいちばん薄い製品では1センチを切るものまで出ています。しかも搭載されている機能は通話の他にメール、デジタルカメラにインターネット、 テレビを視聴できたり、ミュージックプレイヤーとして使える製品まであります。このような小型化・多機能化は先ほどお話ししたとおり、 電子部品の小型化・高性能化がなければ実現しなかったものです。

さらに、電子部品の小型化・高性能化が実現した背景には、その製造技術と検査技術の躍進があったからです。 これまでにない新しい部品には新しい検査方法が必要になるというわけです。そのうちの一つが肉眼では見ることのできない内部を非破壊で検査するX線検査装置なのです。

X線透過検査による品質管理


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パソコンのCPUに使われるICチップを例に挙げましょう。

ICチップは回路を印刷した数ミリ角の半導体チップを中心に、基板とチップの電極を接合し、樹脂で固めてできあがっています。

かつてはチップの電極と基板をハンダで接合していたので、パターン照合などの外観を見る検査で品質管理を行うことができましたが、 現在のように超小型化・多層化した基板ではBGA方式(Ball Grid Array)で接合されるようになっており、 100ミクロンほどのボール状のハンダから「ひび割れ」、「気泡」、「未接合」、「近隣との接触」など、 さまざまな不良要因を発見することは非常に難しくなっています。

しかも基板を積層化することが普通になった今では、検査しなければならない箇所が視認できないときも珍しくなく、 そのような形状ではどれだけ高倍率の視認装置があっても役に立たないのです。 このような場合、X線検査装置を使った透過検査によって品質管理を行うことが増えてきました。

もちろん樹脂でモールドされたチップ内部のワイヤーの断裂などは視認することはできず、 仮に不良が発見されたときでも、モールドされたチップを壊して内部を確認しようとすると、破断の原因が何らかの原因によるものなのか、 それとも解析のための破壊によるものなのか、区別が付かなくなってしまうのです。 このようなとき、非破壊で内部の検査ができるX線検査装置は非常に有効な手段になっているのです。

最先端検査技術のX線検査装置

X線検査装置は非破壊で内部を高倍率で検査することを可能にしただけでなく、 応用検査の拡大によっていままでは手段がなかった不具合解析が可能となっています。 中でも現在、電子部品業界で注目されているのが「加熱装置」とX線検査装置の組み合わせです。

加熱装置はリフローなどの温度変化と同じになるように、事前に設定した加熱条件通りの温度勾配を再現することができ、 X線による透過像を観察することで一定の温度下での試料の変化や、温度変化に伴う試料内部の経過観察ができるようになっています。

加熱装置+X線検査装置が注目される理由は、環境問題にあります。

環境対策のために新素材の"鉛フリーハンダ"に切り替えると溶接時の温度を上げる必要があり、 溶接温度を上昇させることで発生するハンダ内部の「気泡(ボイド)」の変化の様子や接合状態など、 新たな接合技術のノウハウを早急に確立するために経過観察が不可欠となっているのです。

また、CT機能と組み合わせて内部構造を3次元画像で観察することにより、 いままで知り得なかった複合素材の繊維配合や粒子の分散など、さまざまな素材の構造までも観察することが可能となり、 新素材の開発や品質管理に役立てるようになっています。

これらの最先端の品質検査で発見された結果は、設計や製造技術へフィードバックされて、 さらなる高性能/高品質な次世代電子部品に生かされ、やがては私たちの生活をより快適にするための技術や製品として拡がっていくことになります。

技術情報誌 Flags(PDFデータ) 2008年02月号(1 MB)