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『ダイレクトマーキング 用途拡大中(前編)』
Vol.28
以前、ダイレクトマーキングを特集した際は、基板や液晶の製造工程での使用例などを紹介しました。 それから約2年、当時は限られたところでしか使われていなかったダイレクトマーキングは大きな広がりを見せています。
ダイレクトマーキングって何だ?
最初にダイレクトマーキングについて復習しておきましょう。
通常、バーコードや2次元コードはラベルなどに印字した上で、貼り付けて使用されます。 しかし、バーコード/2次元コードを利用した管理を行うものには、さまざまな事情でラベルを貼ることができないものが存在します。 例えば、小型の電子機器の中の小さな基板。基板サイズが小さいにも関わらず沢山の部品を実装しているためにラベルを貼るスペースがありません。
また製造工程において洗浄の工程がある場合なども、ラベルの耐久性の問題を解決する必要があります。 このようなときに有効な手段とされるのがダイレクトマーキングで、対象素材にバーコードや2次元コードを直接印字(マーキング)してしまう方法です。
ダイレクトマーキングが選べれる理由
ダイレクトマーキングが選択されるのには、大きく2つの理由があります。
最初の理由は、スペースの問題を解決するために選択される場合です。 前述の通り、例えばMP3プレーヤーやデジタルカメラのような小型の機器には、2次元コードを使って管理したくてもラベルを貼るスペースがないことが往々にしてあります。 個別管理が目的の場合が多いので、製造番号とロットだけをコード化しているケースも多く、2次元コードのサイズも小さなもので済みます。 しかし、その小さな2次元コードもラベル上に印刷してしまうとそれなりの大きさになってしまい、部品に貼れなくなります。 従ってバーコード/2次元コードを使っての管理は難しくなります。そのような時に多く見られるのがレーザーマーカー(後述)によって内蔵基板などに直接印字してしまうケースです。 この方法なら必要なスペースはコードのサイズとほぼ同じで済みます。
また耐久性の問題からダイレクトマーキングが選択される代表的な例は、自動車のエンジンのように長いあいだ極めて高い温度の環境で使用される可能性があるものや、 屋外に長期間放置される可能性があるような場合です。 その他にも、ラベルを貼ることはできても、製造の工程などで剥がれてしまう、変色してしまうといったケースではダイレクトマーキングが選ばれます。 このような厳しい環境でも素材にダイレクトにマーキングするわけですから、バーコードや2次元コードは半永久的に残ります。こうして耐久性の問題を解決するのです。
このように大雑把に言うと電子機器/部品の製造工程では多くの場合印字スペースの問題を解決するために、 自動車関連では印字の耐久性を期待してダイレクトマーキングが選ばれています。
ダイレクトマーキングのさまざまな印字方法
次に「どのように直接印字するか」を復習しておきましょう。
印字の手段は幾通りかありますが、選択する基準は大きく(1)どんな素材に印字するか、(2)どれぐらいのサイズで印字するか、によって大別できます。
ダイレクトマーキングでは大きく分けてレーザーで素材の表面に加工(印字)をする方法と、ドットピンで素材に凹凸を付けて印字する方法、 インクジェットプリントで直接印刷をする方法があります。 さらにレーザーでの印字を分類すると、炭酸ガス(CO2)を触媒にした気体レーザーのCO2レーザーと、YAGレーザー(※)、YVO4レーザーの固体レーザーに分類されます。
一般にYAG/YVO4レーザーはCO2レーザーと比べてスポットサイズが小さく、出力が強いという特徴があるため、 極小の2次元コードを印字する場合や素材が堅い場合などはYAG/YVO4が選ばれます。
またドットピンと呼ばれるマーキング方法は、鉄やステンレスなど表面が非常に硬いものに対して使用されます。
このマーキング方法は、スタイラスと呼ばれるペンのようなものを空気や磁石で押し出すことによって硬い表面にマーキングを行っていきます。 この方法が自動車関連で多く見られるのは、もう皆さんお分かりでしょう。
このような種別を踏まえた上で見ると、電子機器の中に入っているプリント基板のような「表面が比較的柔らかいもの」にダイレクトマーキングする場合は、 印字する2次元コードのサイズによってCO2タイプかYAG/YVO4のどちらかが使われ、ステンレスや鉄などにはドットピンが使用される傾向が強いということになります。 自動車関連でも「印字を小さくしたい」というニーズを解決するようなときにはYAG/YVO4が使用されています。
また直接印刷のインクジェットもコスト面では有利な面もあり、使用されているケースが多数あります。(後編に続く)
※YAGレーザー … 『ヤグ』と読み、レーザー発振に使われている鉱物、イットリウム(Y)、アルミニウム(A)、ガーネット(G)の頭文字を取っています。
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Vol.05「ダイレクトマーキングの現状」
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