需要の広がるハンディターミナル

VOL.015 flags 2006年7月号

携帯性という特長が認められ、あらゆる場面で利用が拡大しているハンディターミナル。最近では携帯性が重要視される場面以外のニーズにも対応しようと、各社からさまざまなタイプのハンディターミナルが市場に投入されています。今回はバーコード、2次元コードに対応したハンディターミナルの現状を解説します。

ハンディターミナルを取り巻く現在の状況

ハンディターミナルを取り巻く現在の状況

ハンディターミナルは、データの発生時点で収集・処理ができることなどから、流通・運輸・製造などあらゆる業種で活用されており、業務の省力化・効率化の促進に貢献しています。

機能に関しては利用者がそれぞれの業務に対して最適な機器を選ぶ傾向があるため、メーカー側も低価格・携帯性という2つの大きなアピールポイントのほかに、防塵・防水、落下衝撃への耐久性などの耐環境性能の強化、大画面表示、メモリの大容量化や無線化など、高機能化に関する課題に取り組んでいます。しかしながら近年ではノートパソコンやペン入力コンピューター、PDA端末、携帯電話などの参入によって携帯端末に対するユーザーの認識が変わってきており、ハンディターミナルの位置付けが曖昧になっている状況であることは否めません。

マーケットはどうなっているのか

2005年度のハンディターミナルの出荷実績を見てみると、対前年度比較で台数で12%、金額では37%増加しています。実績を詳しく見てみると、無線タイプの増加がデータ蓄積型(バッチタイプ)の減少分を補い、さらに台数・金額の両方で実績を押し上げています。また2次元コード対応タイプのハンディターミナルは飛躍的に増加。台数で222%、金額でも237%の増加となっています。

直近の出荷予測では、商品コードの14桁化(GTIN)やRSS・合成シンボルの標準化によって医療分野への導入加速が期待できるため、需要はさらに拡大すると予測されています。ただしハンディターミナルの出荷実績は、運輸業界など大口ユーザーのリプレイスの有無によって、台数・金額共に大きく変動することがあるため、 正確な予測は非常に難しいと考えられています。

さまざまな場面で使用されるハンディターミナル

ハンディターミナルが使われている具体的な例としては、宅配業者のドライバーがいちばん身近でしょう。 ドライバーが荷物の配達の際に携帯しているハンディターミナルを使って伝票に印刷されているバーコードを読み取る姿を目にしているのではないかと思います。 また最近では駐車違反取り締まりを行っている駐車監視員がハンディターミナルを使って、証拠写真の撮影や違反ステッカー(確認標章)を携帯プリンタから発行している場面に 遭遇することもあります。

運輸業・製造業にかかわらず入出荷業務やピッキング業務にはハンディターミナルは欠かすことのできない機器になっていますし、製造業では生産管理業務にも多数使用されています。 その他にも電気・水道などのメーターの検針業務、携帯POS端末としての使用など、ハンディターミナルが使用される業務は多岐にわたっています。 使用のされ方がさまざまなので、当然のことながらハンディターミナルに求められる機能は画一的ではありません。 実際にはハンディターミナルを使用する業務ごとに違うと言えるほど、求められる機能には違いがあります。

作業の確認や指示の確認が多いピッキング・生産管理業務、携帯POSや駐車監視などでは操作性・視認性が求められるためPDA端末型の大型液晶タイプが好まれます。 このような業務では携帯プリンタを組み合わせて使用するケースも多くなります。

一方、宅配業務や入出荷業務など、操作頻度が高く、作業効率が求められる業務では読み取りの作業性が重視されるため、大型液晶よりも携帯性、 堅牢性に優れたFA向けのハンディターミナルが多く採用されています。 また、トレーサビリティ・製造事故防止の仕組みを構築するには2次元コードの採用が必要になるので、2次元コードに対応したハンディターミナルを導入するというかたちになります。

ハンディターミナルのこれから

カメラ付き携帯が世の中に行き渡ったころ、商談中にユーザーから「今の携帯はインターネット、カメラ、当然電話が付いて、さらにはゲームまで出来て数万円なのに、なんでハンディターミナルは高いの?」と質問されたことがありました。

一見すると製品を見比べたときに素直に出てくる感想に見えますが、実際にはずいぶん大きな違いがあります。

FAの分野に供給される機器は、その供給自体の体制が安定していることと、機器そのものの性能に高い信頼が置けることが必要になります。
データの消失などという状況は言うまでもありませんが、携帯電話やパソコンのような「生産完了につき在庫限り」という作り切り・売り切りという販売方法は許されません。また製品のサイクルも半年ないし1年という短期的なものではなく、5年、10年というサイクル(同様に部品の確保)が求められるのです。

携帯電話などとハンディターミナルの持っている背景が根本的に違う以上、この2つをコスト面で単純に比較することはできません。コストダウンは常に視野から外すことのできない重要な要素ですが、ハンディターミナルの市場をさらに拡大していくためには、高機能化に取り組みながらも、多様なユーザニーズを的確に捉え、無駄な機能のない製品を開発し、いかに潜在需要を掘り起こすかが重要であると言えるでしょう。

用途別にみたハンディターミナルの機能適性
 

さまざまな用途ごとに求められる機能を表にしています。
適性レベルは◎→○→△→×の順です。

 宅配業務入出荷ピッキング生産管理検針業務駐車
監視員
PDA端末
FA向け端末×
2次元コード××
RF-ID×××
写真撮影機能××
無線LAN××
堅牢性