医療・薬品業界注目!RSSコンポジットコード(前編)

VOL.013 2006年5月号

製造メーカーでは広く知られるようになったトレーサビリティ。それがいま医療の現場にも広がろうとしています。キーとなるのは「RSSコード」「RSSコンポジットコード」と呼ばれる新しい体系のバーコード。2回にわたり医療関係の業界で大注目のRSSコードをご紹介します。今回はその前編。

医療事故の大半は投薬ミス

ニュース番組や新聞などのメディアでは医療ミスが事件として報道される機会が増えてきました。医療ミスと呼ばれるさまざまな事件は、高度な技術の中で偶発的に起きてしまったミスとは言えないものから、本当に単純な確認ミスに起因する事件までさまざまな形で発生しています。テレビや新聞ではどれも一様に重大なものとして扱われているものの、実際の医療事故の大半は投薬ミスが原因によるものなのです。

少し古いデータですが、1999年にアメリカのASHP(American Society of Health-System Pharmacists)から医療事故に関する事故統計が発表されました。その統計によるとアメリカでの医療事故発生数は年間75万件、そのうち8万人を超える患者が死亡しているという事実が明らかになりました。

医療事故の原因で最も多かったものは「投薬ミス」によるもので、死傷者は最大で年間10万人、約20兆円の賠償金が支払われたと推定されています。そのアメリカでは、行政機関である米国食品医薬品局(FDA)がバーコードを利用した医薬品やカテーテルなどの医療資材管理に関する法制化を進め、2004年2月に発表された『バーコード規制』が今年から完全義務化されています。

一方、日本では乾燥ヒト脳硬膜の移植による感染で発病するクロイツフェルト・ヤコブ病や、非加熱血液製剤の投与による感染で発病するC型肝炎など、動物や人の血液・組織に由来する原料を用いた医薬品による感染症被害が大きな事件となっています。

しかし、実際に起きている医療過誤・医療ミスの多くは投与する薬品を取り違える、投薬すべき患者を間違えるといった「ヒューマンエラー」で占められています。この状況を踏まえ医療ミス防止の環境作りのための切り札として考えられているのが、RSSコード/RSSコンポジットコードなのです。

RSSコンポジットコードとは

従来から国内の医療機器メーカーではEAN128(バーコードの1つ)を使ったトレーサビリティが始められています。もともとは、アメリカで導入されていた医療機器のトレーサビリティの関係で外資系医療機器メーカーが国内に持ち込んだものですが、その後日本医療機器産業連合会(旧・日医機協)が中心となって医療材料における流通トレーサビリティ用の標準コード化して採用しました。

RSSコードにはいくつかの種類がありますが、医療・医薬品業界では「RSSリミテッド(RSS Limited)」「RSS-14スタック(RSS-14 Stacked)」「RSS-14スタック合成シンボルCC-A」もしくは「RSSリミテッド合成シンボルCC-A」が標準になると言われています(それぞれについては下図を参照)。

図では上段にマイクロPDFが付けられたコードを紹介していますが、「RSSコード」と呼ぶのは下段(RSS Stackedでは中段も)のバーコード部分のことで、 上段にマイクロPDFを重ねたものは「RSSコンポジット(RSS合成シンボル)」と呼ばれます。