どんなものにも応用可能『小分け/投入システム』(後編)

VOL.011 2006年3月号

「入口のIT化」が難しい理由を挙げた前号に続き、今月は後編として「小分け/投入システム」導入の重要性と、 バーコード/2次元コードを利用した解決の方法、そして一つの成功事例をご紹介します。

なぜ「入り口のIT化が」重要なのか?

原料名などを2次元コードラベル化した小分け袋

前号では製造工程の最初の部分である原材料の『小分け/投入工程』のシステム化が難しい要因として、 熟練した作業者の経験や勘、ノウハウ、裁量といったアナログデータをデジタル化することへの抵抗感、 いくつものベンダーから入荷する多品目にわたる原材料をフォーマット化することの大変さを挙げました。

ではこのような現状を乗り越えてでも「小分け/ 投入」の工程をシステム化しなければならない理由とは何なのでしょうか。 『小分け/ 投入工程』の代表例とも言える食品加工工場を見てみましょう。

食品加工現場で重要視されていることは一体何でしょうか。生産効率が重要であることは言うまでもありません。 しかしながら、今日この生産効率と同様に重要視されているのは、『事故のない製品作り』と『トレーサビリティ』なのです。 しかし現状はというと…… 現場では1日に数千個の小分け原料を扱っていることも少なくありません。

そこでは数字の読み違いや記入間違い、原料の取り違い、賞味期限切れミス、計量許容誤差の精度、投入ミス、投入漏れ、端数原料の無駄など、 現場には数多くの「ミス」や問題が発生する要素が絶えず存在します。これらを防止するために何重にもわたる確認作業(チェック機能)が設けられていますが、 それでも問題は起こります。

そして実際に問題が発生すると、事後の防止策としてさらに「チェックのためのチェック」の機能が増やされ、生産効率は下がり、 作業自体が複雑になってしまい、また問題を起こす要素が増えていくという、いわば負のスパイラルに落ち込んでしまっているのが現状です。 また、このような現場に対して「トレーサビリティ」の導入を求めると、前述のチェック機能に加えて、製造履歴を記録する作業が加わることになります。 これは現場に対しても非常に多大な労力と時間を求めることになり、さきほどの負のスパイラルにはまっていく要因にもなりかねません。 ではこのような現場で事故のない製品作りやトレーサビリティを実現するにはどのようにしたら良いのでしょう?

バーコード/2次元コードを利用する

小分け袋の2次元コードと秤を連動させたシステム

これらの問題を解決すべく登場したのが、今日、数多くの企業で導入されているバーコード/ 2次元コードを利用したシステムです。 まず最初に、原材料を受け入れる段階で原料コード、ロット番号、賞味期限、数量などを2次元コード化してそれぞれの原材料(原料の入った袋や容器)に貼り付けていきます。



次に計量/ 小分けの作業では、製造品目、原料、容量、製造日、加工装置、処理バッチ、投入順などを2次元コード化してそれぞれの小分け容器に貼り付けていきます。 そして原材料の受け入れから投入までの全ての作業で必ず2次元コードを読み取ることで、作業指示や作業の事前チェックが可能なシステムを構築することができます。 (2次元コード内のデータをモニターなどに表示したり、そのデータをベースに製造レシピや作業指示などを表示したり、その工程が正しいか機械的にチェックしたりすることができます。)

2次元コードを利用するメリットは、①必要な情報をそのままコード化できること(漢字もコード化することができます)、②2次元コードをスキャナで読み取る際、コード化された情報をそのまま目視確認できるという点にあります。 実際に2次元コードを使ったシステムでは作業者によるポカミスや製造ミス撲減など、大きな成果を上げています。 またこれらのシステム導入によって原材料在庫の精度やリアルタイム性が向上し、結果としてキャッシュフローも改善するという2次的な効果も生まれています。

導入成功事例 – 『QITEC』

食品業界のみならず、医療、化学、化粧品の分野にも応用され、注目を集めているキューピー株式会社のFAシステム『QITEC(キューアイ・テック)』をご紹介します。 『QITEC』のコンセプトは、製造工程で事故が発生した場合に起こりうる企業価値の下落という現実に対し、事故発生の要因となる作業の大半をパートさんが担っているという現状を背景として、 いかにして大量かつ複雑な作業の負担と、それに伴う心理的負担を軽減し、事故がなく、安心して作業できる仕組みを作るか?ということから始まっています。

この仕組みを構築する手段として、早くから製造現場にバーコードを取り入れ、生産計画、原材料受発注業務の効率化」「事故未然防止システム」 「ポカミス防止システム」を次々にシステム化し、結果「在庫圧縮」、「生産性向上」、「事故のない物作り」で大きな成果を上げてきました。

現在はバーコードを2次元コードに切り替えて、自社の製造現場はもとより、関連企業・仕入先へ展開し、 更なる品質向上とトレーサビリティシステムの構築に至っています。

詳しい説明については、加工食品トレー サビリティの第一人者、キューピー株式会社技術企画担当部長高山勇氏執筆の 『現場改善から生まれたトレーサビリティシステムーわくわくする現場改善38年の歴史』をお読み下さい。 加工食品のトレーサビリティ構築や、投資金額を抑えた、現場作業者の使いやすいシステム構築について、現場への応用事例を判りやすく紹介しています。