ESD対策の重要性!

VOL.002 2005年6月号

近年、電子部品の製造現場だけでなく、電子制御化が進む自動車業界でもESD(静電気放電)対策の重要性が注目されて始めています。 静電気放電対策のスタンダードがまだ確立されていない中、製造現場では今どのような対策が行われているか、またスキャナーはどうのような対策を施しているのか。スキャナーのESD対策をここに公開。

スタンダードがない!

ESDとは、Electro-Static Discharge(静電気放電)の略称で、人体のような帯電した導電性の物体が電子機器などの他の導電性物体に接触したり、接近することによって発生する現象です。
静電気放電は電子機器の誤作動や損傷など、深刻な問題を引き起こすため、高度の静電気対策が必要な場所では電卓から筆記用具まで、ESD対策済みの製品が使用されています。
FA業界を例に挙げると、電子部品関連産業でのESD対策が良く知られていますが、ESD対策のスタンダード化に向けた作業が行われているものの、現時点ではまだ共通スタンダードが確立されていません。そのため、各社様々なレベルでの対策を行っているのが現状です。
静電気による損傷を受けやすい電子部品は、『静電気敏感性デバイス(Electro-Static Sensitive Device)』や『静電気放電敏感性デバイス(Electrostatic Discharge Sensitive Device)』と呼ばれ、取り扱いには特別の注意が必要になります。
部品の損傷を防ぐには、静電気対策が施された領域でのみ部品を取り扱う必要がありますが、実際にどの程度の対策を講じるかは、各会社の管理方針や帯電レベル、部品それぞれに要求される対策レベルなどよって異なります。
一般的には床、作業台、椅子、工具などは帯電防止加工が施された製品を使用する一方で、静電気の発生要素である湿度の管理を行ったり、イオナイザ(注1)によって帯電レベルを制御するなどの対策を施すケースが多くなっています。
また、これらの部品を取り扱う作業者は、専用の衣服や履物、リストストラップを着用して作業にあたります。冒頭でお話しした筆記用具や電卓、クリアファイルまで帯電防止を施すのは部品の損傷を完全に防止する必要のあるケースですが、このような徹底したESD対策を講じるケースも現在では決して少なくありません。

ESD対策の専門企業とタイアップ

当社のユーザー各社のケースでは、ハードディスク製造工場や半導体の後工程でESD対応のイメージャーのニーズが増加しています。当社では以前から樹脂素材を応用し、金型射出方式でESD対策を施したスキャナー(THIR-3000-3ESD)を販売していますが、最近はスキャナーについても高度の対策のレベルが求められるようになっており、従来モデルではご要望にお応えできないケースも出てきています。
製造工程上、金型射出方式ではスキャナーの筐体の各ポイントで同じ抵抗値を保証することは不可能ですので、この問題の解決のため、当社ではESD対策スキャナーのラインアップを一新しました。
新たなスキャナーTHIR-3001EはESD対策を専門とする企業と共同で開発されたもので、素材によるESD対策では、帯電防止のために発塵の元となるカーボン系の素子を使用する場合もありますが、THIR-3001Eではスキャナーの筐体表面を化学反応させることによって、スキャナー全体で均一な表面抵抗値(10×5乗Ω)をコンタミフリー(発塵なし)で実現しています。
またこの方式の表面加工は衝撃・耐久性ともに強く、特に耐久性能については、従来の耐久検査機によるテストに加え、3年間ものあいだ製造現場で実際に使用されたスキャナーを使用したテストを行い、良好な結果を出しています。

[注1]
イオナイザ…イオンを発生させる装置。 除電に利用されることが多い。


ESD対応 2次元コードハンドスキャナ

当社は長年にわたり静電気対策モデルの研究開発に取り組んでいる数少ないメーカーです。
液晶デバイスを始め、電子部品を製造している現場ではESDによるマイコンの破壊や劣化対策は必須事項となっており完成品メーカーからも信頼性評価の重要項目として注目されております。
当社のE S D 対策スキャナは、新技術を取り入れたカーボンフリー、低イオンコンタミネーション及び低アウトガスを実現した素材を使用しております。