トレーサビリティ その1~プリント基板管理の流れ

Vol.001 2005年5月号

現在、自動車・自動車部品・電子機器メーカーなどで導入が加速しているプリント基板のトレーサビリティ。従来の『部分最適型』システムの持つ問題点を踏まえ、現在の主流である『全体最適型』システムに移行するためには何をすれば良いのか?

プリント基板製造工程の現状

従来、プリント基板製造工程においてバーコード管理の対象といえば、主としてマウンターのリール掛けの管理やリペアマシンのデータ管理でした。 これらの管理方法はどれも基板に部品が実装された後を対象としているため、基板の製造工程全体をカバーするトレーサビリティとは大きな隔たりがあるのが現実でした。 現在、自動車や自動車部品、電子機器メーカーからはプリント基板の製造工程全体を管理するトレーサビリティが強く求められています。これを実現するためには、基板の回路印刷から始まる製造工程の全てを網羅するトータルなシステム設計が必要となります。今回はプリント基板製造工程のトレーサビリティについてお話ししようと思います。

2次元コードを直接印字する

最も一般的なプリント基板の製造工程は、『印刷』→『マウント』→『検査』→『切断』→『リペア』という流れが挙げられます。プリント基板の製造におけるトレーサビリティを実現するためには、各工程の全ての個所で製造情報を管理し、トレースできる状態を作る必要があります。

あるユーザーでは1ラインに対して十数台の2次元シンボルイメージャーを取り付け、実績を自動的に収集しています。 実績を収集するためには、まずプリント基板を個体管理するための識別情報(2次元シンボルなど)を印字しなければなりません。印字にはいくつかの方法がありますが、CO2レーザーを使ったレーザーマーカーでプリント基板に2次元シンボルを直接印字し、各工程・実装機ごとにイメージャーで読み取らせる方法が最も効果的です。 基板のサイズによる違いもありますが、プリント基板に直接印字するという条件のため印字スペースを確保することが難しく(一般的には5mm角程度)、同じ情報量ならバーコードに比べ数段小型化ができる2次元シンボル(注1)が好まれます。一般的には、1セルあたり100~250ミクロンのDataMatrixが多く使用されています。現在、プリント基板の製造は、1枚の大判から4枚、8枚といった複数の基板を取る『多面取り』が一般化しています。トレーサビリティの観点からは大判と個別に切り分けられた基板を情報でひも付けにする『枚葉管理』が必要となります。 プリント基板の製造工程では、印字箇所を指定して自動印字するXYテーブルを組み込んだCO2レーザーマーカーが使われ、大判の段階で管理上必要となる2次元シンボルをすべて印字することで、枚葉管理が行われています。 その際、レーザーマーカーに当社のイメージャーが取り付けられ、印字後の品質チェックに活躍しています。

基板管理における当社の実績

プリント基板の製造工程では、当社の固定式2次元シンボルイメージャーが多く使用されています。 これらはカメラとデコーダーが一体化タイプのイメージャーで、用途に合わせてCマウントレンズを交換することができます。

[注1] 例えば細バーが0.19mmまたはセルサイズ0.25mm、情報量が英数字100文字とした場合、1平方センチ当たりの情報量はPDF417が約40文字、QRコード(モデル2)が約75文字、DataMatrix(ECC200)が約120文字です。これに対して、Code128(バーコード)は1平方センチあたりの情報化密度が約4文字ですから、DataMatrixと比較すると情報化密度が30倍に相当します。