自動認識の動向(後編)

VOL.169 2019年6月号

 改元して一か月たち、書類の日付欄に令和という文字が登場するようになってきました。平成はどんな時代だったのか人それぞれに思いはあろうかと思いますが、新しい令和の時代は始まりました。自動認識技術の世界も変化は訪れています。今月は自動認識業界の動向とトピックスを紹介いたします。

出荷統計

 一般社団法人日本自動認識システム協会(以下、JAISA)では毎年出荷統計を発表しています。概要は以下のような結果になっています。

2018年の自動認識機器市場の出荷金額は2,460億円で2017年比2.9%増
2019年の自動認識機器市場の出荷予測金額は2,592億円で2018年比5.4%増
2018年の自動認識市場全体の出荷金額合計は、前年対比2.9%増の2,460億円であった。
項目ではバーコードプリンタ、バーコードサプライ、RFID、バイオメトリクス、ソフトウェアが伸びたが、バーコードリーダが昨年を下回る結果となった。

各分野の前年対比の出荷金額は、バーコードリーダが10.7%減の310億円、バーコードプリンタが4.3%増の449億円、バーコードサプライが4.8%増の1,258億円、RFIDが5.4%増の358億円、バイオメトリクスが35.2%増の34億円、ソフトウェアが4.4%増の52億円という結果であった。

2019年自動認識市場全体の出荷金額は、自動車、電機、機械等の製造業界での設備投資の需要が若干落ち着きを見せるが、流通、物流、サービス業、医療、食品業界での安定した需要から、2018年対比5.4%増の2,592億円を予測している。
(一社)日本自動認識システム協会HPより

合計では昨年と比較して極端に大きな変化はなく、微増となっています。分野別にはバーコードサプライが一番大きく全体の半分近くを占めており、ついでバーコードプリンタが続きます。バーコード関連のサプライ、プリンタ、リーダの3分野で全体の8割を超えます。UHF帯RFIDは盛んに使われ始めていますが、やはり過去からの導入・実稼働の実績は大きく、自動認識分野ではバーコード関連が相当な量を、使用されています。

最近のシステム事例~画像認識~

 JAISAでは年に1度、「自動認識システム大賞」を募集しています。この制度は先進的かつその効果がきわめて顕著な優れた自動認識関連の技術やシステムを表彰するものです。
 ここ10年、市場規模ではバーコードほどではない「RFID」分野のシステムの受賞が多く、大賞もほとんどすべてがRFID分野でしたが、2018年度は一転、大賞から入選まで受賞した10点のうち、大賞も含めて4点が「画像認識」分野でした。2018年の大賞はNTTコミュニケーションズ株式会社の「監視カメラ映像からの自動人物検索システム Takumi Eyes」というもので、監視カメラ映像からの人物検索システムです。

 人の顔といった一部分でなく人物全体の特徴を捉えることにより、従来はうまく映っていないためにできなかったような映像でも、その中に特定の人物が映っていることを推定し、これまで探しきれていなかった人物の発見を可能にする、というものです。

人や服装などをカメラ画像から認識、対象と照合にAIを活用しており、高精度に判定できるようです。不審者や、迷子さがしに活用できます。
 そのほか「ブランド品と鑑定書の紐づけシステム」、「3次元センサーを活用した高精度食事識別システム」、「段ボール箱自動認識技術の荷降ろし作業自動化への活用」が画像認識分野で受賞しています。JAISAの自動認識システム大賞は先進性に重きをおかれており、新しい技術のものが受賞する傾向にあり、このように画像処理分野で画期的なものが生まれてきていることが伺えます。

FA分野の画像認識活用

 FA分野でも、単純にラベルに印字された1D/2Dシンボルを読み取るだけではない画像認識技術が展開されています。
 もうすでにおなじみなのはDPM(ダイレクトパーツマーキング)です。1D/2Dシンボルを金属や樹脂の部品にレーザーで刻印したり、ドットピンで打ったり、はては薬品の化学反応でマーキングして刻み込みます。中には非常に読み取り難いシンボルになることがもありますが、各種の画像認識技術を応用して、取得した画像から情報を読み取ります。
 さらにそこにパターンマッチング、OCRといった技術を併用してより高度な難読1D/2Dシンボルの読み取りや、OCRによる数字や文字の認識を行うことが出来ます。パターンマッチングとは、あらかじめ画像パターンを登録しておき、読み取り対象の画像が登録したパターンの画像とどの程度一致するかを判断する処理です。
OCRは画像から文字や数字を認識してコンピュータで利用できる文字コードのデータに変換する処理です。
 以下、当社のMVF-500シリーズでの応用例を紹介します。

例1 パターンを元にした位置決めによる角度補正
読み取り対象物は、きちんと同じ向きで流れてくるとは限りません。読み取り対象と同じ画像の中の何らかのパターンを利用して相対的に読み取り対象の文字やシンボルの位置を決め、読み取りを行う例。



例2 複雑な処理パターンの例
パターンマッチングでロゴ印字品質の簡易検査をしつつ、位置決めに使用してシンボルの内容の特定部分と文字の印字内容の特定部分が合致しているかの確認を行い、OK/NG判定。


 今後はAIの高度化、ディープラーニングの進歩も併せて、画像認識技術の発展と様々な分野での活用が期待されます。
生産能力の向上や業務効率の改善などでお悩みやご不明な点等ありましたら遠慮なく当社までお問い合わせください。自動認識技術のエキスパートが確実なソリューションをご提供いたします。